A Dog's World 

~海外で暮らす・日々の記録・旅の記憶~   

ブッパー・ラートリー(タイ映画)

「ブッパー・ラートリー」は2003年のタイ製ホラー映画です (邦題「609(ロクマルキュウ)」)。主演のプローイ (チャーマーン・ブンヤサック) 目当てに、あらすじなどまったく知らずに観始めました。

映画は大学の図書館で静かに本を読むブッパー (プローイ) をそっと見つめる男子学生エークの独白から始まります。どこか影があり、クラスの誰ともしゃべらず、笑顔すら見せたことのないブッパーに、エークはまだ誰も開いたことのない本のようだと神秘的な魅力を感じます。

エークはこの1ヶ月ずっとストーカーのように彼女の後を追っていました。行動を把握し、彼女の住むオスカーアパートの609号室にそっと食べ物やプレゼントを届けていたのです。そしてようやくエークはブッパーに話しかけられるのでした。

エークの高級車に乗って郊外に出かけたブッパー。しかし3日間、エークはひたすらベッドの上でブッパーの身体を求め続けました。ひとり張り切るエークをよそに、ブッパーの顔には悲しみの表情が浮かんでいました。すると、ベッドシーンはそのままテレビ画面に。

実はエーク、悪友たちと賭けをしていたのです。あのお固いブッパーを落とせるかどうかという。隠し撮りされたブッパーとのベッドシーンを見て悪友は負けを認め、エークに高級酒を1本差し出しました。賭けが終わったエークは姿を消し電話番号も変え、ブッパーの連絡を拒絶しました。

2ヶ月後、ブッパーはエークとの行為により妊娠していました。映画では養父から長年性的虐待を受けていたことも発覚します (その場で養父を万年筆で滅多刺し)。自暴自棄になり手首を切ろうとしていたブッパーに、突然エークから連絡がありました。

エークは資産家の父からイギリス留学するよう命じられたことを機に、ずっと心に引っかかっていたブッパーに謝りたかったのです。会って直接許しを請うエーク。しかしブッパーから妊娠を告げられると、将来の結婚をちらつかせ堕胎を強要、ブッパーも承諾するしかありませんでした。

病院からブッパーのアパートにもどったふたり。ベッドの上からすがるような目で見つめ、弱々しく手を握ってくるブッパー。エークはその手をそっとふりほどくと、食べ物を買ってくると言い残し、そのままブッパーを置いて翌日イギリスに行ってしまいました。

場面は変わって、金勘定と家賃の取り立てに余念がない大家。イライラしながら大家が609号室のドアをノックすると、ドアが開きブッパーが顔をのぞかせました。家賃の支払いが1ヶ月も滞っていること、明日家賃が払えなかったら即刻出ていってもらうことを、大家は怒鳴るように伝えました。

翌日、家賃が未払いなことから609号室に向かった大家。ノックをしても反応がなく、合鍵を使ってドアを開けると、ドアチェーンがかかっていました。部屋の中は強烈な悪臭が漂っています。

チェーンを切って部屋に入ると、ブッパーの姿が見えません。寝室の奥のトイレに行くと、そこには醜く顔が腫れ上がった死体がありました。警察を呼び見てもらうと、遺体は死後1ヶ月とのこと。怪訝に思う大家。

警察が袋に包んだ遺体を部屋から運び出そうとしたところ、突然遺体がむくりと起き上がりました。怪異現象が起き始めると、アパートの住人と向かいの食堂店員たち、それにインチキ霊媒師や怪しい神父を巻き込んで、てんやわんやの大騒ぎ。。

「あれ?ナンダコレ?」開始40分くらいから徐々に違和感が。それまではけっこう出来の良い正統派ホラー映画だったのに、だんだん雲行きが怪しくなってきました。そう、この映画、ホラーはホラーでも、ホラーコメディだったんです。609号室に居着いてしまったお化けをあの手この手で追い出そうとする話。

見どころはブッパー役プローイの素敵な幽霊ぶり。目の下真っ黒のお化けメイクで住民に睨みをきかせたかと思うと、アパート中を血の海にしたり、エセ神父 (エクソシストのパロディー!) を棒でタコ殴りにしたり。でも歩き方がペンギンみたいで意外に可愛く、後にイギリスから帰ってきたエークの前では生前のきれいな顔にもどる乙女っぷり。

あとはエークの女々しくもゲスい態度がいいですね。せっかくブッパーの元にもどったのに、身体の関係を拒否された途端、向かいの屋台のギャル店員と浮気してしまう。怒ったブッパーはギャル店員から買った熱々のお粥をエークの○○にザバー。さらにエークの両脚を○○。嫉妬に狂うブッパーの愛しさよ。

大家を筆頭に登場人物がみんな個性的で1本ネジがはずれた人ばかり。誰が写っていても画面映えし、ダレることなくどんどん話が展開していきます。ホラーとしても力が入っているし、コメディとしてもなかなか笑える作品。何より当時21歳のプローイのダイヤの原石感に見惚れます。

ラストの実はエークも○○だったというサプライズは、「そうきたか!」という気はするものの、冷静に考えたら話のつじつまが合わなくなりそうなので、まああってもなくてもという感じです。うん、でも面白かった!

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