A Dog's World 

~海外で暮らす・日々の記録・旅の記憶~   

バッドジーニアス(タイ映画)

「バッドジーニアス 危険な天才たち」は2017年にタイと東南アジアで歴代級のヒットを飛ばした傑作タイ映画です。これも予備知識ほぼなく観始めました。きっと "学園カンニングコメディ" くらいだろうと思いつつ。

たしかに最初はタイの高校を舞台にした、ちょっとしたカンニングものでした。コメディといえばコメディだけれどけっこうスリリングに描いているなと思っていたら、次第にスケールが大きくなり、クライマックスは舞台をオーストラリアに移し、もう完全にクライムサスペンス。

しかもけっこう手に汗握る。タイ映画というドメスティックな枠を超えて、これは普通に世界に通用するレベルだと思いました。実際、各国でヒットしています。エンディングのカタルシスはちょっと息を呑むし、クライムエンターテイメントという言葉が一番ぴったりくるかも。

これが映画初主演というチュティモン・ジョンジャルーンスックジンが、頭脳明晰だけれど容姿も性格もきつそうな主人公リンを好演。逆に友達のグレースの方が顔も性格も (頭が悪いのも含め) 可愛いよなと誰もが最初はそう思うのではないでしょうか。

しかし物語が進むにつれだんだんリンの感情が描かれ、かつ私服のシーンが増えてくると、9頭身のモデル体型と相まって魅力が大爆発します (実際本職はモデルです)。最後は想像もしなかったエンディングで、物語としての余韻はかなり複雑なものに。

教育においても発現する貧富の格差など、生まれながらの不平等はなかなか乗り越えられないという普遍的な社会問題を断じる一方で、弱者が不法な手段を用いてのし上がることを賛辞しているわけでもありません。

普通の映画なら「バカな金持ちがしっぺ返しを喰らい真面目な貧者が総取りしてハッピーエンド」となりそうなところ、この映画は最後、誰も勝者はいないように見えます。願わくばリンの今後の人生が精神的にも金銭的にも幸せに満ちたものでありますように。

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