A Dog's World 

~海外で暮らす・日々の記録・旅の記憶~   

船乗りシンドバッド 特撮映画シリーズ

シンドバッド 七回目の航海

アラビアンナイトでおなじみのキャラクター「船乗りシンドバッド」が数々の冒険を繰り広げるこの映画は、後にシリーズ化されるほど人気を呼びました。今の特撮技術からするとかなり稚拙な印象を受けますが、これはこれで味があるし、もちろん当時 (1958年製作) としては相当画期的なものだったと思います。ひとつ目の巨人や双頭の怪鳥、そしてガイコツとのチャンバラは、手に汗握ること間違いなしです。お姫様は美人で露出が高め。邪心を持った魔術師によって、手のひらに乗るほど小さくされてしまいますが、個人的には和田慎二の「ポケットにティンカーベル」を彷彿とさせて (実際は映画が先ですけど)、オタク心をくすぐられます。小人萌え?

魔法のランプから出てきた魔神が小さな子供で、何かやれと命令すると「I shall try.(まぁ、やってみます)」と頼りなく答えるのもシャレが効いています。バグダッドのお城はアルハンブラ宮殿だし、衣装や小道具の雰囲気は抜群。まさに欧米人が考えるアラビアンナイトの世界そのものでしょう。ただ、若い時にこの映画を見た自分もこれがアラブ世界かとかなり偏って理解していたことは否めません。実際にはこんなにカラフルで露出が高い、男女混合の生活スタイルではないし。ま、そもそもおとぎ話なんですけど。

絶海の孤島でひとつ目の巨人が守る魔法のランプをどうしても手に入れたい魔術師は、シンドバッドがチャンドラ王国から連れてきたお姫様に魔法をかけ、体を小さくしてしまいます。魔術師は、姫の体を元に戻すためには巨人がいる島に住む双頭の怪鳥「ロック」の卵のかけらが必要だと言い、船乗りシンドバットを連れ出すことに成功しました。シンドバッドの活躍もそうですが、お姫様が小さい体を利用して活躍する姿が「あり得ない!」のひと言ですが、楽しさは抜群。こういうファミリー向け娯楽映画はご都合主義でなくてはいけません。ドキドキハラハラは良いですが、あまり複雑すぎるプロットは不要。話はどんどん展開しなければ。

なんとかロック鳥の卵のかけらと、そして魔法のランプも手に入れたシンドバッド。しかし姫は魔術師に地下宮殿に連れ去られてしまいます。火を吹くドラゴンをやり過ごし、宮殿奥深くで魔術師を追い詰めると、シンドバッドはようやく姫の姿を元に戻させました。魔術によって動き始めたガイコツと剣による死闘を繰り広げた後、さらにランプを追ってきた巨人にはドラゴンをけしかけ、最後は魔術師自身が設計した巨大弓矢でドラゴンと魔術師を倒すことに成功しました。途中、魔法のランプの魔神ジニーを束縛から解放するという約束を守るため、ランプを溶岩の川に投げ込んだのですが、その子が最後にシンドバッドの船に乗り込んでいたというオチもあります。

怪物たちになんとも言えない愛嬌があるのが、このシリーズの特徴でしょうか。ひとつ目の巨人 (サイクロプス Cyclops) が人を丸焼きにするシーンなんて、文字にすると残酷ですが、写真の通りイスに腰掛けて、いかにもという棒に人をくくりつけクルクル回しながら焼くという牧歌的なスタイル (この後人も助かりました)。巨人のファンはけっこう多いようですがそれも納得。とにかく今でも大好きな映画です。

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シンドバッド 黄金の航海

第1作からだいぶ年数がたちましたが、シンドバッドシリーズの続編 (1973年製作)。魔術師の力で顔に火傷をおったマラビア王国の領主とともに、黄金の首飾りの失われたかけらを求めて伝説の島に向かうシンドバッド一行。ホムンクルス、6本腕の仏像 (カーリー)、半人半馬のケンタウロスなど、神話的な怪物が生き生きと動き回り、シンドバッドを次々と苦しめます。仮面をかぶった領主と、なぜか美人奴隷と酔っぱらいのダメ青年までついてきますが、やはり冒険に美女はつきもの。最後にシンドバッドが国王の座よりも美女を選ぶのもお約束。船の舳先に彫られた女神が魔術によって動き出し乗組員を襲い、伝説の島への海図を奪うアイデアも秀逸なら、魔術師がその悪魔的な力を使うと老化してみるみる白髪と皺だらけになっていく設定もなかなか凝っています。ちなみに、マラビア王国の領主の城はまたアルハンブラ宮殿でした。

航海の途中、偶然シンドバッドは黄金の首飾りの一部を手に入れます。それを手にした瞬間、右手に目の入れ墨を持つ女性の幻が浮かび、興味を抱いたシンドバッドが黄金の首飾りを手元に置くことを決めると、不思議な導きで船はマラビア王国にたどり着きました。マラビアで仮面の領主に事情を聞くと、黄金の首飾りをつなぎ合わせるとこの世を支配することができる絶対的な力が手に入るとのこと。そうしてシンドバッドは乗組員を補充し、仮面の領主とともに伝説の島レムリアを目指します。幻で見た、手のひらに目の入れ墨を持つ美女マリアンナとも出会い、長い航海が始まりました。魔術師が後をつけています。途中、海図を奪われてしまいますが、シンドバッドは腕と勘を頼りに、なんとか島にたどり着きました。

魔術師もまんまと追跡に成功し、伝説の島に上陸しました。シンドバッドたちに6本の腕を持つカーリー、半人半馬、虎の体にワシの羽をはやした巨大な怪獣を差し向けますが、それらをことごとく打ち破るシンドバッド。しかし倒されたカーリーの中から黄金の首飾りの最後のかけらを見つけた魔術師は、ついに神秘の泉に行き絶大な力を手に入れました。魔術を使って老化した体は新たな力によって若返り、透明になってシンドバッドと死闘を繰り広げます (と言うほど長丁場ではないですが)。結局、噴水の中に一瞬その影が浮き出た魔術師は、シンドバッドにとどめを刺されてしまいました。すると、泉の底から不思議な王冠が出現。シンドバッドはすかさず王冠を仮面の領主に捧げました。すると、領主は昔の姿を取り戻しましたとさ。めでたしめでたし。

国に帰る船の上で、マリアンナがシンドバッドに詰め寄ります。「王国と財宝が手に入ったのに、なぜ手放したの?」 シンドバッドは「自由を選んだのさ、国王に自由はないし結婚も自由にできない」と答え、彼女を熱く抱擁するのでした。いかすプロポーズですね。なかなか男気を見せました。しかし、彼女は明らかに不満顔。そりゃそうでしょう。もしかしたら「王妃」だったかもしれないのに、結局「船長のおかみさん」止まりだったわけですから。二人の先行きが気になるエンディングでした。

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シンドバッド 虎の目大冒険

シリーズ第三作ともなるとやや息切れ感が。怪物もおとなしめ。アラビアンナイト的な世界観から、シャンバラを思わせる国が現れるなど神秘思想の断片を継ぎ合わせたような構成に。ただし、美女は2倍、お色気も2倍です。魔術師でもある義母王妃ゼノビアによってヒヒに変えられてしまったカシム王子を元の姿に戻すべく、王子の美貌の妹ファラー姫を連れて旅立つシンドバッド一行。虎の目を持つゼノビアによって呼び出された怪物に襲われますが、それを振り切ってまず目指したのは、絶海の孤島カスガルに住むと言われる伝説の賢人メランシアスでした。その一行を、ゼノビアが息子ラフィとともに、機械の心臓を持つ牛の怪物像ミナトンに櫓をこがせ秘かに後をつけます。

シンドバッドがカスガルに着くと、眼前に巨大な神殿が (ヨルダンのペトラです、美しい!)。しかし原住民に石を投げつけられ手痛い歓迎を受けます。それを止めたのはメランシアスの娘、若く美しいディオーネでした。メランシアスに会うと、カシム王子を元に戻すためには極北の地に存在すると伝えられる古代人アリマスピの国ハイパボリアに行くしかないと言われます。メランシアス親子が加わり、氷に閉ざされた北の海への航海が始まりました。

途中で船が岩にぶつかり櫓が曲がってしまいその修理に手間取ったゼノビアは (←このエピソードいる?)、北に向かうシンドバッドたちの目的地をさぐろうと、秘薬により自らの体をカモメに変え、シンドバッドの船に乗り込みます。一度は捕まってしまうものの、メランシアスの意識下から行き先を知ることに成功しました。しかし自分の船に戻ると、秘薬の量が足りなかったため、人間の姿に戻ったものの右足がカモメのまま。ますます恨みをつのらすゼノビア。シンドバッド一行は雪原で巨大セイウチと戦い、長い道のりを越えてようやくハイパボリアにたどり着きました。そこは温かな陽光が射す楽園。つかの間の休養を楽しむ一行でしたが、そこに現れたのは一本角の原始巨人。しかしメランシアスは彼が敵ではないことを見抜き、逆に神殿まで案内させました。

神殿内部には光が降り注ぐ祭壇がありました。その光にさらせば王子は人間の姿に戻れると確信した一行は、すぐに作業に取りかかります。しかしそこに現れたゼノビアとラフィ。え?、ミナトンですか?。なんとミナトンは、登場シーンこそ迫力があって不気味そのもの、戦闘力が異常に高そうで期待をあおりましたが、船をこぐだけこいでやっと神殿に着いたと思ったら、無理矢理開けた入り口の巨石を外したはずみで石の下敷きになってあっけなく壊れてしまいました。ラフィも戦いになったらあっという間に階段を転げ落ち即死。情けない…。ということで、ようやくカシム王子は人間に戻ることができました。

そうこうしているうちに温度の急上昇で神殿が崩れ始めます。逃げようとするシンドバッド一向に、サーベルタイガーに魂を移したゼノビアが襲いかかりました。そこに後から着いてきたやけにフレンドリーな一本角原始巨人が参戦し、なんだかんだ最後はシンドバッドの勝利。ギリギリで神殿脱出に成功しました。最後、ファラー姫はシンドバッドと、ディオーネはカシム王子と結ばれハッピーエンド。これもお約束ですね。しかし前二作に比べたら凡作と言われても仕方ないかも。それに本作が公開された1977年といえばスターウォーズ一作目の年 (日本公開は翌1978年) ですから、シンドバッドシリーズとしての役目は完全に終わっていました。ミナトンに合掌。

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