A Dog's World 

~海外で暮らす・日々の記録・旅の記憶~   

アジア旅行記

シンガポールでスッポン?

日本でいうところの高級食材、すなわち「和牛、松茸、フグ、スッポン」のたぐいを、それまで食べたことがありませんでした。1年か2年に一度は日本に休暇で帰っていたので、その度に「今度こそ」という気持ちを持っていたにもかかわらず、日本円の価格表示があまりにもリアルで、結局機会を逸していました。

たとえば外国で食べ物の値段が20ドルと言われても、そんなもんかなくらいにしか思いませんが、日本で2000円と言われれば、「そこは1000円に抑えて残りは雑誌と缶ジュースでも買って・・・」などという計算が働きます。まあそもそも貧乏性なんですね。

というわけで、同じ値段でも海外でなら比較的あっさり出せるという意識のもと、これまで香港でツバメの巣、バンコクでフカヒレの姿煮などを食べてきました。中東・アフリカから日本に帰るときは、南回りか北回りを選ぶことになります。南回りであればタイ、シンガポール、香港などが定番の経由地です。ある時、シンガポール経由を選びました。「あのホテルで点心を食べて、あそこでは鶏の足を食べよう」などと計画を立て、とにかく美味しい物を食べようと心に決めてシンガポールに向かいました。

シンガポール到着の翌日、ホーカーズという屋台街に出かけ、あちこちの屋台を冷やかしながら見ていたとき、ある1軒で亀の絵が飾ってあるのを見つけて立ち止まりました。食べる亀といえば、もうスッポンしかありません。日本では手が出ませんでしたが、ここでなら食べられると小躍りし、値段も聞かずに亀の絵を指さして注文しました。

ようやくこれでスッポンを制覇できるとワクワクしながら待つこと数分。大きめのカップに並々と入れられた茶色いスープが運ばれてきました。いろいろ葉っぱのようなものが入っています。においはまさに漢方薬。そしていくつか肉片が見え隠れしていました。「なんだかいかにも効きそうだな、さすがスッポン」などと悦に入りながらスープを食べ終わり、屋台の中にいたおばさんにお金を払おうと身を乗り出すと、内側に漢字で書かれたメニューが貼ってありました。

「えーと、亀、亀・・・」とメニューを目で追っていくと、最後の方に「草亀」の文字を見つけしばし呆然としてしまいました。スッポンのシンガポール名は知りませんが、なんか絶対「草亀」ではないような気がします。「もしかして今食べたあれは、スッポンではなくてお祭りで売っているようなあの亀?」そう思うと頭がぐるぐると混乱しましたが、その場では何の確認もできませんでした。なんだか億劫になって、結局未だに調べていないのですが。。。

シンガポールでホットコーヒーテイクアウト

シンガポールにはホーカーズという小さな屋台街がたくさんあります。もともとこういうところの食事が大好きなので、シンガポールにいた1週間、昼夜を問わず毎日のように通っていました。チャーハン、焼きそば、汁ビーフン、餃子、肉まん、豚の角煮など、B級グルメ好きにとってはストライクゾーンど真ん中です。アラブ料理も大好きですが、「やっぱり日本人はしょう油味だねぇ」などとしみじみ思いながら胃袋にかき込んでいました。

ホーカーズも規模によっては食事のブースしかないところもありますが、少し大きめのところなら、必ずデザート系のものを扱っています。フルーツ、インドっぽいミルク系のお菓子、ソフトドリンク、そしてコーヒー・紅茶。シンガポールを歩いていると、突然街角で得も言われぬ香ばしい香りに出会うことがあります。これがシンガポールの炭焼きコーヒーで、今まで旅行中に飲んだコーヒーではダントツにおいしいと思いました (トルココーヒーはカテゴリーが違うような気がするので除外)。

しかし極上の香りを漂わせている店に限って、見るからに汚いオープンカフェ形式のお店で、飲んでいるお客はランニングシャツに短パン姿のおじさん達ばかり。店に入ろうとしても気後れすること間違いなしですが、でもとにかく美味しい。その炭焼きコーヒーが、いつも行くホーカーズにもありました。

その日は、コーヒーをホテルで飲むためテイクアウトすることにしました。屋台といえばテイクアウト、これは東南アジアの常識です。チャーハンでも汁ビーフンでも、すべて袋につめてテイクアウトOK。お祭りで金魚釣りをしたあとに金魚を入れてくれるあんな感じの小さめのナイロン袋で、開口部のヒモを引っ張ると口がきゅっと閉まって持ち帰るのに便利です。

ということで、こちらとしては「アイスコーヒー」のテイクアウトというつもりで伝えたのですが、言葉がまったく通じないためか、お店のおばさんは何の迷いもなく、ホットコーヒーをナイロン袋にひしゃくですくって入れたのでした。ストローをさし、ヒモをきゅっと閉め、おばさんはにこやかにコーヒーで満たされたナイロン袋を渡してくれました。

学習したことがいくつか。まず「アイスコーヒー」という言葉は世界では通用しないこと。そして「熱々のホットコーヒーはストローでは飲めない」という事実。世の中、知らないことばかり。

香港のウナギソバ

海外1人旅の何が嫌かって、食事ほど憂鬱なものはありません。レストランではそもそも良い席には案内されませんし、相席は当たり前。すごくおいしい食事をしてもその気持ちを共有する人はいませんし、まずかったらそのやるせなさを自分1人で抱えることになり、ストレスがたまる一方です。

初めて香港を1人で旅したときも、こんな感じでした。ガイドブックにも載っている有名なラーメン屋だったので、最初お昼時に行ったら混みすぎていて入れず、夕方また出直しました。午後6時、店に入り小さなテーブルに座ると、中国語と英語で書いてあるメニューをペラペラめくりながら、何十種類もある麺の中から「ウナギソバ」を頼むことにしました。

店には次々とお客が入ってきます。自分のテーブルも、5分もしないうちにもう1人と相席になりました。その人は手早く注文を済ませましたが、その後も特に目を合わせるでもなく、ラーメンが来るのをお互いぼーっと待っていました。

しばらくして、店員がひと言何か言いながらドンブリを置いていきました。テーブルの真ん中に置かれたそのドンブリは、注文の順番からしてウナギソバだろろうと思ったので、とりあえず手前に寄せました。しかし、ドンブリの中は麺とスープのみ。肝心のウナギが乗っていません。

「ウナギは麺に練り込んであるのか、スープにとけ込んでいるのか、はたまた日本人だからなめられたのか」と一瞬パニックになりましたが、1人旅のときはつい虚勢を張ってしまうもの。さも知っているようなフリをして、涼しい顔で麺を食べ始めました。相席の男性のことは気にしないよう、顔も見ませんでした。

2、3分して、店員が本物のウナギソバと、麻婆茄子のお皿を持ってくると、ようやくすべてを理解しました。彼は麻婆茄子と素ラーメンのセットを頼んでいたのです。もちろんウナギソバには立派なウナギが乗っていました。結局、相席の人には新しいラーメンが来ましたし、自分はウナギソバ1杯の値段で素ラーメンも食べることができました (最後まで顔真っ赤にして食べましたが)。あれは情けなかった。今思い出しても恥ずかしい。。

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モルジブの太巻き

リヤドのような内陸の乾燥した町にいると、時々無性に海が見たくなります。ある年、思い切ってモルジブに旅行することにしました。長時間のフライトの末、飛行機の窓からモルジブの島々が見えてきたときは、珊瑚礁のあまりの美しさに「ここは天国か」とため息がでました。

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空港からは、スピードボートに乗って約30分、「クルンバビレッジ」というホテルがある島まで移動しました。クルンバは空港島から一番近く、真水のシャワー、7つのレストラン、多彩なハウスリーフと、設備・環境ともに申し分ありません。

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モルジブは、空港から遠ければ遠いほど海がきれいになっていくことは知っていましたが、遠くてへんぴな島のホテルは真水がないし、食事もそこそこです。手つかずの自然を楽しみたい人は遠い島の方が良いと思いますが (ドイツ人は遠くへ遠くへ行く傾向あり)、自分にとってはクルンバの海も充分以上にきれいでした。

シュノーケリングでカラフルな熱帯魚やエイ、フグを観察していると、急に小魚の大群に囲まれ、自分が魚の仲間になったような気がしました。でも、よくクチビルをツンツンと突かれたのは鬱陶しかった。。シュノーケリングに疲れたら、ビーチに上がり椰子の実ジュースを片手にヤドカリと遊ぶ。眠くなったらビーチマットに寝ころんで、波の音を聞きながらうたた寝する。なんとも贅沢な時間の過ごし方でした。

到着から3日目、首都マーレがある島に観光ツアーで行きました。マーケットに新鮮な魚が並ぶ中、カツオ節 (ナマリ節) を発見しました。味見させてもらったらまさに日本のナマリ節と同じ味で、お土産に思わず何本も買ってしまいました。

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これだけ新鮮な魚があがるなら、どこかでお刺身が食べられるんじゃないかと期待がふくらんだまさにその晩、ホテルのレストランで、メニューに「Sushi」を発見しました (いくつかあるレストランのうちまだ行っていなかった所)。迷わず注文しましたが、来てみればそれは「お寿司」とは明らかにイメージが違うものでした。

お皿の上には直径15cm、厚さ3cmほどに切られた、言ってみれば「太巻き」が、ポンと1つ乗っています。中心部には卵焼き、タクアン、カンピョウ、ホウレンソウ、それらの具をご飯が取り囲み、周囲には黒ゴマがまぶされています。さらに全体がクレソンと何かのソースで彩られていて、見た目は確かにきれいでした。

モルジブではお寿司がこのように解釈され、Sushiに昇華したわけです。当然ナイフとフォークで食べましたが、これはこれでアリだと思いました。

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スリランカのコロッケとソーメン

サウジアラビアの首都リヤドで住んでいたアパートのマネージャーがスリランカ人で、ある日彼と世間話をしていたら、「今度ぜひ一緒にキャンディーに行こう」と誘われました。キャンディーは彼の故郷で、スリランカ内陸部にある古く落ち着いたたたずまいの小さな町です。どこに行こうか決めかねていた自分は乗り気になって即決断。

そうして我々は、ラマダン明けの休暇を利用して一緒にリヤドを出発しました。こちらは1週間、彼は2週間の休暇です。コロンボ空港に降り立つと、そこで車をチャーター、一路キャンディーを目指しました。途中の風景は、まるでひと昔前の日本の田舎にタイムスリップしたようでした。田んぼと畑が延々続き、緑はあくまで濃く深く、太陽がさんさんと降り注ぎ、セミの鳴き声に子供の頃の記憶が鮮やかによみがえりました。

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途中、車を止めて軽いランチを食べました。峠の茶屋といった風情の小さなレストランでしたが、チキンカレーを注文したらオマケにコロッケ (クロケット) がついてきてビックリしました。コロッケは「日本に帰ったら食べたい日本食」のひとつですが、よく考えたら名前からしてもともと外国から入ってきたものなんですね。しかしよもやスリランカの山奥でコロッケに出会おうとは。スリランカではその後何回もコロッケを食べましたから、かなりポピュラーな食べ物のようです。いつどこで食べても美味しかった。

さて、スリランカといえばカレーです。もう毎日カレー漬け。しかしこれが飽きません。辛さもほどほど、油も少な目、実にサッパリしています。もちろん油ギトギト、トウガラシたっぷりのご馳走カレーもありますが、全体的にアッサリ系が多いと思いました。ちなみにキャンディーでは、カレーの辛さの素はコショウです。スリランカ北部のタミル民族はインド文化圏なのでトウガラシを、南部のシンハラ民族はコショウをよく使うと聞きました。

ホテルの朝食もカレー。しかし朝はパンではなく「ソーメン」。実は見た目がソーメンそのものなので勝手にそう言っているだけですが、食感もパスタかソーメンかと言われれば圧倒的にソーメンよりです。名前は「ストリングホッパー」。これにカレーソースをかけていただきますが、朝からツルツルと食が進み、いつもお腹一杯食べていました。

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キャンディ滞在中は北に足をのばしてダンブッラの石窟寺院やシギリヤロックを見たり、南部に下りてヌワラエリヤの紅茶ファーム見学するなど素晴らしい体験をいくつもしましたが、とにもかくにもスリランカは食べ物が美味しかったです。食事だけでいったら老後はここに住めるかもと本気で考えたりしました。

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スリランカ紅茶の王様 シルバーチップ

日本では銘茶の産地と呼ばれる地域に生まれ育った自分ですが、小さいときからとにかく緑茶だけは美味しいものを毎日飲んでいました。なので、自然に「美味しい緑茶の味」がわかるようになったのだと思います。

もちろん、地元ではお茶の美味しさなど特に意識することはありませんでした。お茶とは「そういう味のもの」だったからです。しかし、大人になって故郷を離れ、いろいろな所で緑茶を飲むにつけ、「世間の人はこんなに味気ないお茶を飲んでいるのか」とよくため息をついたものです。

本当のところ、地元以外で「美味しいお茶だ」と思ったことはほとんどありませんでした。もっとも、我が家は未だに山の湧き水を水道に引いていて、地元のお茶を地元の清水で煎れる、という最高の条件を備えていたのですから、当たり前と言えば当たり前です。

さて、それまで海外生活ではもっぱらコーヒーを愛飲していたのですが (日本から地元のお茶を持っていってもすぐになくなるので)、スリランカを旅行して、すっかり紅茶の美味しさに目覚めました。

そうなると、最高級のものを飲んでみたくなるのは当然の心理です。緑茶でも、本当に美味しいものを飲んでいたからこそ、良いお茶、悪いお茶がわかるようになりました。紅茶でも然りです。

「最高級=万人に美味しい」という訳ではないことも、緑茶の経験からわかりますが、突き詰めれば、やはり高級品は通をうならせるだけの美味しさを持っている、ということはわかります。そんなわけで、スリランカを発つ前日、コロンボのさも高そうな紅茶屋で、かねてから名前だけは知っていた「シルバーチップ」を買いました。

紅茶は普通、1芯2葉 (One Bud Two Leaves) を摘み、それをぎゅうぎゅうと機械で押しつぶしてから、適温で酸化発酵させて作ります。しかし、シルバーチップは1芯 (若芽) のみを摘み取って作るため、とても希少品なのだそうです。

スリランカに旅行することになって、なんとなくシルバーチップのことは頭にあったのですが、峠の茶屋で飲む紅茶ですら、その美味しさに感動していたので、サウジアラビアに戻る日が近づいてくるにつれ、是が非でも手に入れたいと思うようになっていました。

そのお店では、シルバーチップを店頭で陳列販売していたわけではありません。噂に聞いていた通り、かなりの高級品、希少品であるため、奥の方にそっとしまわれていました。「シルバーチップが欲しいのだが」と店員にたずねると、最初は「ない」の一点張り。

しかしこちらが「日本で茶園をやっている (←嘘じゃない)、美味しい紅茶を求めてスリランカまでやって来た、是非シルバーチップを売ってくれ」と何度か頼むと、ようやく奥から1パック出してくれたのです。値段は、緑茶の高級品より何倍も高い値がついていました。

翌日、リヤドに戻って来て、早速パックの封を切り、まずは香りを確認しました。すーっと鼻で香りを吸い込むと、いわゆる紅茶の香りではありません。甘くて香ばしいような、日向の匂いというか、とても優しい香りでした。

手のひらに茶葉を広げてみると、若芽がそのまま乾燥したような形でした。色も、普通の紅茶のように酸化発酵して赤黒くなってはおらず、白っぽいままです。そういえば、スリランカの製茶工場の一角で、お茶の若芽だけ天日干ししているのを見ましたが、どうやら、それと同じもののようでした。あの時そうだと気付いていたら、もう少しちゃんと話を聞いたのにな。

せっかくの高級茶ですから、おいしい煎れ方をしなくてはなりません。いろいろ聞いたり読んだりして、だいたい次のような手順が良いとわかりました。

①空気がたくさん入っている水が良い。ボトル入りミネラルウォーターよりむしろ水道水の方が良い。
②お湯は完全に沸騰させるが、沸騰しすぎると水から空気が抜けてしまうのでダメ。
③ティーサーバー、ティーカップは温めておく。
④抽出時間は2~4分。空気が入っている水 (お湯) だと茶葉が良くジャンピングする。
⑤抽出した紅茶は毎回カップに注ぎきる。

まずは普通のリーフティーで何度か練習しました。水道水とボトル水、両方試しましたが、やはりボトル水はほとんど茶葉がジャンピングせず、水道水のお茶とはまったく違う香り・味になりました。

こうやって比べなければこの違いは一生わからなかったでしょうから、この発見は大きかったです。そもそもスリランカで紅茶が美味しかったのは、案外たったこれだけのことだったのかもしれません。高級ぶって高いボトル水を使ったりしては逆にダメなんですね。

さてさて、シルバーチップです。煎れ方について上の手順と変えてみたのは、4分くらいではほとんど色や香りが出なかったため、抽出時間を6~7分とかなり長目にしたことです。これだけ置いても、色は薄い黄金色、香ばしい甘い香りがふわっと立ち上る程度でした。

ひと口すすっただけでは、いわゆる紅茶っぽい、パッと目が覚めるようなはっきりくっきりした味と香りはありません。ダージリンよりもだいぶおとなしいイメージのウバ (セイロンティー) と比べても、さらに穏やか、まろやか、ひそやか。

角の立った自己主張は全くなく、舌を包み込むような、かすかに甘みを感じる優しい味が口の中に広がります。わずかにトロンとしたお湯を飲み込むと、日向の枯れ草のような風味が鼻腔をすっと抜けていきました。

正直な感想は「なんだこれ?紅茶?」 味があまりにも淡いというか、味を知覚するためには飲み手に努力を要求するというか、本体がなくて余韻が全てというか・・・。何ともはや、評価に困ってしまいました。美味しいと言って良いのか、はたまた値段がそのように思い込ませているのか・・・。

とにかく、普通の紅茶とはそもそもが違いました。渋みはまったくないし、美味しい紅茶に感じる青っぽさ (フレッシュな青臭さ) もないし、もちろんフルーティーな香気もありません。味としてはせいぜい「かすかに甘いような気がする」くらい (自分の味覚と感性では・・・)。

シルバーチップが果たしてその価格ほどの価値があるのか、結局よくわかりませんでしたが、ただ、何度飲んでも後を引く、あの不思議な味の余韻は、やはり唯一無二だと思いました。少なくともまだまだ巷にシルバーチップ信仰は多いですし (とくにサウジアラビアなどの中東産油国では)。

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フィリピンのブタの丸焼き

古の昔から、言霊 (言魂) といって言葉には霊的な力が宿ると信じられていますが、やはり言葉の響きというものは侮りがたいエネルギーを持っていると感じます。日々何千、一生に何億と聞く様々な言葉。その中でも、おそらくトップ級の破壊力、そして抗しがたい魅力を持つのが 「ブタの丸焼き」 ではないでしょうか。トリの丸焼き?、いやいや、ヒツジの丸焼き?、全然。やはりブタの丸焼きのインパクトにくらべたら月とスッポンです。(スッポンもヘンな言葉だ)

とまぁ、子どもの頃からブタの丸焼きという言葉を聞くにつけ、心が荒ぶるというか、いてもたってもいられないというか、嵐を予感させるようなそんな猛々しい心持ちになったわけですが、先月、フィリピンのセブ島で、ようやく念願の対面を果たしました。その名も 「レチョン (Lechon)」。いや・・・、レチョンじゃなくて・・・、やはりここは断固ブタの丸焼きと言いたい! 言いたいのですが・・・。

その日、ホテルのレセプションに1枚の告知がありました。「今夜はフィリピンビュッフェ! みんな来てね!」。そんな軽いタッチの書きぶりでしたが (実際は英語ですけど)、メニュー一覧にその名を見つけるや否や、一気に闘志に火がつきました。そいつを自らの歯で食いちぎり、ムシャムシャと咀嚼しながらその烈火の如きエネルギーを我が身に取り込みたい。魂の雄叫びを天空に轟かせたい! 右の拳に力を込めつつ、静かに、そして熱くそう思ったわけです。

そんな鼻息の荒い状態のまま、夕方6時にビーチサイドのオープンテラスに出向くと、いましたよ、きゃつが! しかし、・・・あれ?何この表情?なんだかとてもおだやかな・・・。断末魔のうちに腹を割かれ、太い鉄の棒で串刺しにされたうえ丸一日全身を業火でジリジリと焼かれ、あげくその身をバラバラに刻まれたというのに、怨・恨・呪、そんな苦悶の表情は一切なく、むしろ 「味わって食べてね」 と誘っているかのような優しげな表情をしたレチョン君でした。

肝心のお味の方ですが、まずパリパリの食感がこたえられません。香ばしく飴色にパリッと焼き上がった皮。なのに真っ白な肉はジューシーそのもの。塩味も絶妙、噛むほどに肉汁がジュワーッと広がります。鼻に抜ける香りも上品そのもの。日本の豚肉も美味しいと思いますが、フィリピンのも本当に美味しかったです。見た目のワイルドさとはうらはらに、むしろ繊細な料理じゃないかなと思いました (食べるお店でだいぶ差がありそうですが)。

「ブタの丸焼き食ったどー!」 という雄叫びはあげそこないましたが、レチョンは本当に 「おいしゅうございました」。

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セブ島のホテル

サウジアラビアからセブ島に旅行し、プランテーションベイというホテルに泊まりました。輝く太陽の下、青々ときらめく人口のラグーンがリゾート気分を盛り上げてくれる一方、「またリヤドに帰るのか・・・」 なんて空しさがこみ上げてきたのも事実。リフレッシュできたような、できなかったような。

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8月のフィリピンは雨期ということでホテル代もだいぶ安くなっていましたが、6泊して雨は一度も降らず、むしろ毎日かんかん照りでした。世界的に気象がおかしくなっているのでしょうか。初日でけっこう背中がヒリヒリしてしまったので、あまりシュノーケリングができなかったのは残念。

全体的にそこはかとない老朽感が漂うのは否定できないものの (老舗だから・・・)、依然セブ島の中では1、2を争うおすすめリゾートホテルなんじゃないでしょうか。ただ、食事代が眩暈がするほど高かったです。特に朝食は鼻血もの。朝から、さ、3千円て・・・。セブシティーで食べる5~10倍くらいの値段。まぁ、雰囲気も込みの価格ということで。

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カルボンマーケット(フィリピン セブ島)

セブ島のカルボンマーケット。雑多な熱気と活気と臭気にガーンとやられました。やっぱり市場って楽しいです。

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香港B級グルメ①

2度目のサウジアラビア赴任時は一時帰国の際よくキャセイ航空を利用していました。香港に立ち寄る機会が増え、香港グルメ (B級中心) 舌鼓を打つこと多数。

この時は尖沙咀、厚福街の「桂記」で「招牌雲呑麺」を食べました。ピンポン玉をふた回り大きくしたくらいの立派なエビ雲呑が4個も入っています。桂記の雲呑はこれまで香港で食べた中でもひときわ大きく、3回くらいに分けて食べないととても口に収まりきれません。プリプリの食感、口中にあふれるエビの旨味。なかなかの人気店と聞きましたがそれも納得です。

しかし美味しいのは雲呑だけではありません。スープはコクがありながらもきれのある味わい、細麺は噛むとプチプチと小気味よく切れていく絶妙のゆで加減で、トータルバランスも申し分なし。これで19HK$ (250円) なんだから文句のつけようがありません。またひとつお気に入りの店ができました。

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厚福街でもう一軒、「正仁利潮州菜館」に行きました。ちょっと奮発してフカヒレスープを頼み、あと一品何にしようか迷っていると、店主からしきりにカニをすすめられました。横のテーブルのカップルも食べていたのできっと名物なんでしょう。でもそんなにお腹が空いていなかったので、結局潮州焼きそばをひとつだけ頼みました。

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フカヒレスープは濃厚のひと言。焼きそばは素朴な味。料理と一緒にだされた小さい茶碗にいれられた苦いお茶が、口の中の油をさっぱりと流してくれました (工夫茶というのかな?)。最後に何か甘い物がほしくなり、漢字のメニューから「潮州ナントカ芋」というのをオーダー。ホクホクに揚げられた少し甘味のある芋を砂糖でカリカリにコーティングした熱々のお菓子で、見た目はいまいちですが後を引くおいしさでした。いやはや、満足満足。

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香港B級グルメ②

豚モツ入りお粥、豚肉入りライスロール、豆乳のセット (珍満粥)
香港のお粥はおいしいですねぇ、本当に。しみじみとうまい。サウジを夜12時に出発して香港の空港に着くといつも時差ボケでフラフラですが、そんな時でも優しく胃に流れ込んでいきます。よく見れば安い材料ばかりですが、出来上がるのはこの上なく上品な料理。中華料理職人の魂を感じます。甘い醤油をつけてツルリといただくライスロールもおいしかった。

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水餃子入りラーメン、魚の皮のフライのセット (陳福記)
このラーメン、見た目はどんくさいですが、実は手延べ麺だったりして空港のレストランにしては本格的すぎる一品。しっかり最後の一滴までスープを飲み干しました。魚の皮がまたカリカリでおいしかった。どうしたらこんなにカリカリに揚げられるのか不思議。

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香港B級グルメ③

夏の休暇で香港にトランジット泊した際、前回の旅行で気に入った 「糖朝」 でまた安グルメを堪能しました。エビワンタン麺、モツのお粥、鶏足の蒸し物、漢方ゼリー、豆腐花。どれもおいしかったです。
個人的に点心の中で一番好きなのが鶏足の蒸し物。見た目こそちょっとグロいですが、ピリッとくる甘辛のゼラチンは、ご飯には最高のおかずです。漢方ゼリーは始めて食べましたが、なんとも不思議な味でした。満足、満足。

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韓国料理に舌鼓@ソウル

フィジーから一時帰国の途中、約20時間ソウルでトランジット。夜2食、次の朝2食という充実 (強行軍?) の韓国グルメ満喫旅でした。(1万ウォン=900円)

(1) サムゲタン@百済参鶏湯 (1万3000W)
孵化してから49日たった韓国産若鶏にもち米、ナツメ、高麗人蔘をつめじっくり煮込んだ、優しい味なのに元気がでるような、食べれば食べるほどお腹が空いてくるような、滋味にあふれた逸品。付け合せの白菜キムチは真っ赤な見た目にくらべ甘くてマイルド。カクテキも実は生まれて初めて食べました。大根食わず嫌いの自分ですが、果物?と思うほど甘みがあって美味しかったです。20ccくらいの黄色い飲み物は甘苦くてピリピリしてて、最後に一気飲みしちゃったけどアルコールっぽかったかも (超下戸)。

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(2) 海鮮スンドゥブチゲ@チョンウォンスンドゥブ (8000W)
おぼろ豆腐はトロッと甘くて口当たりマイルド。石釜で炊いた豆ご飯、ちょっとしたピビンパプが作れるセットにキムチ4種と、このお値段にして大満足のボリューム。辛さは激辛、大辛、辛 (レギュラー)、マイルドの4段階。レギュラーにしたけれどそれでも涙がうっすらにじむほどのパンチ力でした。豆腐の甘みと口当たりの滑らかさは特筆モノ。これぞ創業40年を超える老舗の味。

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(3) コムタン@河東館 (1万W)
牛の肉や内蔵を煮込んだスープ、コムタンの名店。朝7時から開いています。実際、朝からサラサラッといけてしまうほどのあっさり味で、食べ終わるとすぐにもう1杯食べたくなるけれど、実はとってもコクがある。口の中でホロホロとくずれるほど柔らかなお肉の美味しさはもちろんのこと、内蔵は臭みもなくこれまたなかなかの珍味。このスープの味の深みは一朝一夕で出せるようなものではありませんね、きっと。卓上のネギ入れ放題。白菜キムチはやっぱり甘みが強くて美味しかったです。

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(4) カルグクス@南海食堂(5000W)
南大門の一角。この細い通路に麺料理を出すお店が両側にズラリ。お店のおばちゃんたちの呼び込み文句は「みんな同じ!」。まあ確かに (笑)。韓国風のうどん、カルグクスは食べ過ぎて疲れた胃に優しく染み渡りました (というか食べ過ぎなら食べなけりゃいいんですけど・・・)。付け合せのキムチに加えおまけはなんとピビンネンミョン小盛り。これがまた甘辛くて美味しかった。あー、大満足。

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