A Dog's World 

~海外で暮らす・日々の記録・旅の記憶~   

ヨルダンのグルメ

マンサフ

サウジアラビアのカフサについて以前書きましたが、ヨルダンにも同じような料理があります。ヒツジを煮込んだスープでご飯を炊き、ご飯の上にお肉を乗せて出すのは同じですが、大きく違うのは、ジャミードというヨーグルトソースをかけて食べることです。

これが日本人には好き嫌いのわかれるところなのですが、個人的にはジャミードなくしてマンサフは成立しないと思うほど、絶妙のマッチングだと信じています。

ヨルダンやシリアなど北アラブの国は、料理がとても発達しています。アラビア半島とは比べ物にならないくらい料理の種類がありますし、それぞれ手が込んでいます。

中にはヨーロッパ料理かと見間違うほど洗練されたものもありますが、その中で、アラビア半島のカフサを発展させた形のマンサフは、料理そのものの野性味と、ヨーグルトソースの繊細さが、みこどに融合し昇華していると思います (もしかしたらカフサの方がマンサフから「退化」したものかもしれませんが)。

アラブ料理と聞くと、なんとなく大ざっぱで大味というイメージがあるかもしれませんが、マンサフをはじめ、実際にはヨーロッパ人もびっくりするような繊細な料理がたくさんあります。

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アンマンの秋もそろそろ終わりかという11月のある日、いつものようスーパーに買い物に行くと、店内がチーズのようなこってりした匂いに包まれていました。

カートをひいてうろうろしていると、スパイス売り場の一角に、なにやら白い玉が積み上げられています。それはマンサフにかけるソース、ジャミードの乾燥玉でした。

昔はどの家庭でもジャミード作りが奥さんの大切な仕事だったそうですが、今ではこうして、玉に丸めて乾燥したものが買えるようになっています。

しかし今でも、ジャミード作りがうまいご婦人は近所から引っ張りだこだそうです。結婚するならジャミード作りがうまい女性、と言っていたスタッフもいました。

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ヨルダン料理

マンサフをはじめとして、アラビア半島の人たちもヨルダン料理の美味しさについては太鼓判を押しています。とにかくバラエティーに富んでいます。

前菜
ヨルダン料理は前菜が豊富です。メインディッシュよりおいしいんじゃないかと思う時もあり、また量もかなりのボリュームなので、セーブして食べないとメインが入らないこともあるくらいです。

タブーレサラダ、ホンモス (すりゴマ入り豆ペースト)、ムタッバル (ナスのペースト)、腸詰め、血のソーセージ、ヨーグルトサラダ、オリーブサラダ、脳みそのフライ、チーズフライ、クッベ (紡錘形のメンチカツっぽいフライ)、クッベ・ナイエ (香辛料を混ぜたクッベ用の挽肉を生で食べる)、小鳥の丸揚げ、ファラーフェル (豆のコロッケ)、エナブ (ご飯をブドウの葉でくるんだもの)、マハシ (ズッキーニなどをくり抜きご飯を詰めたもの) などなど。

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マクルーバ
「上下逆さまにひっくり返した」という名前をもつご飯料理。ご飯の上に表面を埋め尽くすほどの肉 (チキンやラム) が乗っています。ご飯にはカリフラワー、ナス、豆などの野菜が一緒に炊き込まれ、仕上げにナッツのフライがふりかけられます。

なお、マクルーバはパレスチナでもっともポピュラーなご飯料理と言われています。ヨルダンの代表料理マンサフに対して、パレスチナのそれがマクルーバなのかもしれません。よく考えたらマクルーバをご馳走になったのはどれもパレスチナ人の家庭でした。

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ラムすね肉のグリル
中東はラムがおいしいです。ビーフは値段も安いですがその分味もいまいち。チキンはおいしいですが、ちょっと軽い。パンチのある肉料理をガッツリ食べたいという時は、やはりラム。しかも、肉の真ん中にビシッとまっすぐな骨が通り、その部分を手で持ってガツガツとむさぼるように食べられるすね肉が最高です。

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ヒツジの顔料理

ヨルダンの首都アンマンに、おもしろいレストランがあります。"カイロレストラン" というお店ですが、「ヒツジの頭」ではなく「ヒツジの顔」というべき料理があるのです。

お店はなかなかの盛況ぶり。店員にオーダーし、どきどきしながら待つこと数分、やがて目の前にあらわれた皿には、思いっきりヒツジの顔が乗っていました。

正確には、脳天でカパッと割られたヒツジの顔、右半分が横たえられていました。なんだかあまりにも「顔」なので、最初はなかなかナイフを入れることができませんでした。

あっけにとられている自分を見て、まわりのお客がくすくすと笑っているようでした。いかんいかんと首をふり、気を取りなおしてナイフを取ると、おもむろにあごの方から食べ始めました。

この料理は顔のゼラチンを食べるものです。一番近い食感といえば豚足でしょうか。豚足はけっこう好きなので、この顔料理もパクパク食べることができました。

そう、豚足と違って、パクパク食べられるほどゼラチンの量が多いのです。フォークの先でプルプルとふるえるゼラチンを見て、コラーゲンだなぁと妙に納得 (←実はゼラチンとかコラーゲンとか区別がよくわかっていない)。

少量ですが頬肉もついていて、これがまたとろとろの絶品です。うれしいことにタン (舌) も半分になって残っていました。とろけるほど煮込まれたタンは、思わずうなるほどの美味しさでした。

見た目はグロテスクですが、ヒツジの顔は本当に美味しかったです。食べ終わったあと、思わず両手で拝んでしまいましたが。

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ラクダ肉

サウジアラビアのスーパーマーケットでは、ヒツジ、鶏肉、牛肉に加え、ウサギやラクダの肉も売られていました。前々から気になっていたので、ある日ついに勇気をふりしぼり、ラクダの切り身を購入。

帰宅後、さっそくまな板の上に乗せて、まず感じたのはずいぶん水っぽい肉だということでした。砂漠の船と言われるだけあって、肉にも水を溜めているのでしょうか。

まず手はじめに塩・胡椒でステーキにしてみると、案の定、水分がどんどん出て、みるみる肉がちぢんでしまいました。焼き上がったステーキはかみ切れないほど堅く、食べるのに難儀しました。

次にラクダのシチューを作ってみると、これがかなりいい。ラクダの肉は煮込めば煮込むほど、やわらかくなって美味しくなるようです。

後日、今度はラクダの挽肉を買ってきて、一緒に買ったヒツジの脳みそと混ぜ、特製ハンバーグを作りました。ショウガやネギ、ゴマ油にしょう油を加え、イメージとしてはヘルシー豆腐ハンバーグといったところです。

翌日、知人とバーベキューをしたのでこれを焼いて食べてもらうと、まさに和風ハンバーグのようだとなかなか好評でした。

ヨルダンでは、年に一度、ハッジ(メッカ巡礼)を祝うイード(犠牲祭)の時期に、ラクダの肉が町の肉屋で一斉に売られます。

サウジでは切り身になってパックで売られていましたが、ヨルダンでは首を一本、肉屋の店頭にぶらさげて売っていました。確かに首の肉はおいしいのですが、いくらなんでもこんな姿で売らなくてもなあと思ったり。

ラクダ肉を2kg買って店を出ようとしたとき、1台の車がその店の前に止まりました。おばさん2人組は肉の値段を聞くと、「そんなに高いのかい!?、イードの翌日に来るよ!」と捨てぜりふを残して去っていきました。

2人組の言う通り、ヨルダンではイードの翌日にはラクダ肉の値段はだいぶ安くなってしまいます。でも、高くてもイードの日に食べたいというのが庶民の気持ちのようです。クリスマスケーキみたいなものですね。

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ラクダのこぶ

ヨルダンで年に一度、ハッジ(メッカ巡礼)の時期に売られるラクダ肉。その時期、肉屋の店頭にはラクダの首がぶらぶらと揺れています。

久しぶりにラクダでも食べようかと、1軒の肉屋に入り店内を物色していると、なにやら白い固まりがフックに引っかけられていました。

そのボリュームとシェイプを見た途端、思わず体が固まりました。「もしかしてこれはあれなのか!?」 はやる気持ちを落ち着かせ、店主に聞いてみると、やはりそれはラクダのこぶでした。ラクダのコブは、バーベキューでかりかりに焼くと最高に美味しいそうです。

なんというか、「マジ!?」という違和感と、「やっぱり食べるんだ!」という興奮が交錯した、複雑な、しかしやっぱり嬉しい気持ちに包まれました。月の砂漠の王子と姫も、ラクダのこぶを食べたのかな、などと考えながら、ひとかたまりのこぶを買ってお店を後にしました。

ハッジの時期は、あちらこちらに "にわかバーベキュー屋" が並びます。たいてい肉屋の特別営業で、軒先には売り物の肉がぶら下がっているのですが、自分で肉類を持ち込んでもOKです。よく焼いてくれとひとこと言えば、あとは香ばしく焼き上がったラクダのこぶが出てくるというわけです。

コレステロールはかなり高そうですが、肉の脂身が好きな人にはたまらない逸品でしょう。自分も美味しいと思いました。

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ヨルダンNo.1レストラン

アンマンの中心部、第2サークル (ロータリー) のすぐ近くに、ファハルッディーン・レストランがあります。アンマンで高級アラブレストランというと必ずタヌウリーンが紹介されるのですが、仕事で食事の予約をしようとスタッフに頼んだら、タヌウリーンよりはファハルッディーンの方が地元の人間には評判が良いと言われました。

ものは試しとそちらで食事会をしてみたら、なるほど、出てくるものすべてが納得の美味しさでした。アラブ料理は、メインディッシュとなると大体どのお店でもシシカバブとかミックスグリルで、まずいことはありませんが、とびきり美味しいということもありません。

なんと言っても、アラブ料理の命は前菜です。ファハルッディーンは珍しい前菜をいくつも持っていて、特に驚いたのが小鳥の丸揚げ。こんなの初めてです。小骨までバリバリ食べられました。

そして生肉のミンチ (クッベ・ナイエ)。レバノンではポピュラーだそうですが、ヨルダンではあまり一般的ではなく、これをパクパク食べるヨルダン人も実はあまりいないのですが、スパイスが効いたお肉は甘みがあって絶品でした。

他にも脳みそのフライ、脳みそのサラダ、血のソーセージ、イナブ (ブドウの葉っぱ)、マハシ (ズッキーニなどにご飯を詰めたもの) などなど、他のレストランとは一線を画すラインナップと美味しさでした。

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生鮮市場

アンマンのダウンタウンには、肉や野菜を売る生鮮市場があります。ゴチャゴチャした雰囲気が大好きで、週末によく足を運びました。

肉屋のコーナーでは皮を剥がれたヒツジがブラブラと揺れています。もちろんアラブ人はヒツジを食べるプロですから、足、内臓、頭とほとんどすべての部位をショーケースに陳列しています。蛍光灯の下で青白く光るヒツジの頭というのは、あまり気持ちの良いものではありませんが、でもヒツジの「顔」っておいしいんですよね。

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野菜コーナーには青々とした葉もの野菜が山のように積まれています。ジャガイモの山、キャベツの山、ナスの山、アプリコットの山などなど。四方を野菜と果物に囲まれるって、なんだかとっても良いです。日本でスーパーマーケットに行くとあふれんばかりの食べ物に取り囲まれてこの上ない幸福感に包まれますが、そもそも好きなんですね、そういう状況が。

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ヨルダンのワイン

アンマンから北東に30分ほどの町、ザルカにあるワイナリー、Eagle Distilleries社は1957年創業、ヨルダンで唯一と言って良い酒造会社です。

自分が見学に訪れた時はちょうどワインの仕込みがひと通り終わったところで、タンクのひとつは絞りたてのジュースで満たされていました。

ブドウは在来種を含め4種を使用しています。白ブドウと違って赤ブドウはほとんど国内で生産されていないため、ウエストバンク (ヨルダン川西岸) から買い付けているそうです。

人がブドウを踏み、薄暗い地下室にワイン樽がゴロゴロ・・・、といった画を想像して行ったのですが、ステンレスの大きなタンクが並ぶ、近代的な工場でした。

ここではワインだけでなくアラクなどの蒸留酒類、それに付随的に発生する二酸化炭素から、ドライアイスまで作っていました。

工場の見学をした後、こちらで作っているワインを試飲させてもらいました。銘柄は4種、Chateau、St.Catherine、Mt.Nebo、Jordan Valleyで、それぞれ白、赤、ロゼがあります。

試飲したのは1999年と2000年の白、赤ワイン。若いだけあって香りもさわやか、軽くさっぱりとした味で、とても飲みやすいと思いました。ワイン通に言わせればまだまだといった感じかもしれませんが、これはこれで美味しかったです。

案内してくれた方はフランス人技術者の研修を2年間受けたそうで、テイスティングと品質管理を担当しています。どうしても気になって聞いたところ、やはりクリスチャンでした。ムスリムはお酒禁止ですからね。

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イードのご馳走

イスラム暦第12月をハッジ (巡礼月) と言います。太陰暦 (1年=354日) なので毎年西暦より11日短く、しだいに季節がずれていきます。

巡礼月の10日はサウジアラビアのメッカ巡礼の最後にあたり、巡礼者は動物犠牲を捧げます (イード・アルアドハー/犠牲祭)。

この日、イスラム世界の各家庭ではいっせいに動物を屠りますが、それに合わせ、アンマンのあちこちでもヒツジの市が立ちました。

それまで空き地だった場所に突然囲いができたと思ったら、たちまち数百頭のヒツジが運び込まれてきました。

そんな市場のひとつを訪ね、南の砂漠からやって来たと言うヒツジ売りの青年に1頭いくらかと聞いてみると、1万5000円から5万円まで、その種類によってかなり値段に開きがありました。

ヒツジはどれも1才未満だそうです。買うかと聞かれたので、どうやって持っていくんだよと答えると、彼はおもむろに1台の車を指さしました。そこには、あばれるヒツジを自家用車のトランクにつめ込む人の姿がありました。なんか強引。。

アラビア語ではヒツジ・ヤギをまとめてガナムと呼びます。ハディース (預言者ムハンマドの言行録) の中で「ガナムはガニーマ (有益) である」と言われているとおり、イスラム教徒の生活の支えをなしてきました。

毛・皮・肉・ミルクなどの利用のため、また犠牲祭での最善の供物として、生活や宗教信条において高い価値が認められています。

しかしその反面、社会通念上、ヒツジ・ヤギの地位はかなり低いものとなっています。他人の犠牲者 (カブシュ=親雄羊)、理解力に欠ける男 (ハルーフ=雄子羊)、何事もあきらめた人間 (マアザ=雌ヤギ)、頑固者 (タイス=雄ヤギ) などに例えられていて、人間に役立っているわりには低いイメージができあがっているようです。

確かに、真横で仲間が屠殺され、軒先につるされ、あげくバーベキューにされているにもかかわらず、たいして抗いもせずミカン箱に入れられ計量を待つ姿を見ると、なんだかこちらが歯がゆくなってしまいます。革命を起こそうというヒツジはいないのでしょうか。

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道端のオリーブ屋

アンマンの自宅の前の道端にスイカの露店ができたのは6月くらいのことです。暑い盛りにはテントの中に山のようにスイカが積まれていました。何度かスイカを買って店のおじさんとは顔見知りになり、値段も多少まけてくれるようになりました。

しかし10月になりだんだんと秋の気配を感じるようになると、スイカは補給されなくなり、少しずつ山も小さくなっていきました。そろそろおじさんも田舎に帰るのかなと少し寂しさを感じていたとき、新しく品物が並べられているのに気がつきました。オリーブです。

挨拶しに行くと、オリーブはパレスチナから運ばれた今年の初物だと言われ、割高なのを承知で買うことにしました。実は、そのまま絞ればオリーブオイルがとれるものだと勘違いしていて、「10kgちょうだい」と気軽に注文してしまいました。

おじさんは満足げにうなずき、大きなハンドルの付いた漏斗のような機械にオリーブをザラザラと入れ、ハンドルをぐるぐる回し始めました。最初にオリーブに塩をまぶした時点で「おや?」と思ったのですが、とりあえず機械の下の方からオリーブオイルが出てくるものだと信じて、出口の一点をじっと見つめていました。

しかしそこから出てきたのは適度につぶされたオリーブで、オイルなど1滴も出てきません。「おじさん、これは何?」とたずねると、「何日かおけばちょうど良い塩加減の漬け物ができあがるよ」と笑顔で言われました。

ガーン。最初に言ってほしかった…。というか「オイルになるんだよね」と聞かなかった自分が悪いんですけど。もっとも、その後インターネットで調べてみると、オリーブオイル作りはとても難しいということがわかりました。そもそも道端でできるものではなかったわけです。

オリーブの塩漬けはとても美味しかったのですが、大半は食べきれず大家さんにあげたり職場で配ったりでした。

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久しぶりのヨルダン料理

2009年3月、所要があってサウジアラビアからヨルダン (アンマン) に出かけました。数年ぶりに食べたメッゼ (生肉盛合せ)、マンサフ、ヒツジの顔。

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