A Dog's World 

~海外で暮らす・日々の記録・旅の記憶~   

エジプトのグルメ

アレキサンドリアのウミガメ

エジプトの北、地中海に面した港湾都市アレキサンドリアでは、毎日新鮮な魚介類が市場に並びます。ある日、アレキサンドリアの魚市場に行ったときのこと、大きなウミガメがひっくり返されてじたばたしていました。甲羅の大きさが70〜80cmほどの大きなカメです。

まわりにいた人たちに聞いてみると、やはり食用として売られているとのこと。しばらくカメを見ていましたが、ふと気がつくと、お札が入ったコップを手にした人たちがひとりまたひとりと集まってきました。

じきに小型ナイフを持ったカメの解体屋があらわれ、先頭の若者からコップを受け取り、お札を自分のポケットにしまうと、やおら「ビスミッラー」と唱え、カメののど元にナイフを突き立てました。

解体屋はすかさずコップを頸動脈にあてがい、すると吹き出た血はすぐにコップをなみなみと満たすのでした。

コップはすぐに若者の手に返され、そうやって順番に7~8人が血の入ったコップを受け取ったかと思うと、みながみな、その場でぐっと一気に飲み干していました。

聞けば、アレキサンドリアではウミガメの血は循環器系の病気に効くと信じられているそうです。この日一緒に行ったカイロっ子に血を飲んだことがあるか聞いてみると、苦虫をかみつぶしたような顔で首を横にふっていました。

みんなが血を飲み終わったあと、ウミガメの体は本格的に解体されていきました。じっと見ていたのが気になったのか、解体屋は「うまいぞ、買っていけ」とこちらに話しかけてきました。

少し迷ったものの、結局その赤身の肉を2キロほど買って帰りました。カイロに戻ってからインターネットで検索してみると、日本でも南の方ではウミガメを食べることがわかりました。
どんな料理にしようか考えた末、無難なところで鍋に決定。昆布だしのおつゆに魚やエビなど魚介類を加え、火にかけて待つことしばし。

正直、ウミガメ鍋はおいしかったです。肉は赤身で良い具合に歯ごたえがあって、噛めば噛むほど味が出る、上質なお肉でした。しかし、そもそも捕獲していいものなのだろうか。。

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コシャリ

エジプトに初めて行ったのは1987年のこと。その時は「世界一まずいケンタッキーフライドチキン」を食べました。まぁ、勝手にそう思ったわけですが、古くて臭い油、揚げすぎでパサパサの肉、絶対オリジナルとは違う衣の味、グニュグニュでもう訳が分からないフライドポテトなど、よくぞここまでというほどのひどい代物でした。

月日は流れ、そのあとエジプトにはなんだかんだで4回ほど旅行に行きましたが、その度「エジプト=料理がまずい」というイメージが刷り込まれていきました。しかし、エジプトにだけは住めない、という固定観念ができあがった頃、あえなくエジプト赴任が決定。1997年から3年間、カイロで生活することになりました。

職場はカイロ中心部から車で30分ほどですが、周りは住宅街で食堂がひとつもありません。結局、運転手に毎日タアメーヤ (豆コロッケのサンドイッチ) を買ってきてもらうことにしました。1つの10円タアメーヤは安いのだけが取り柄で、1ヶ月ほどですっかり飽きてしまいました。

ある日、何か別のものを買ってきてくれと運転手に懇願したところ、「コシャリはどうだ?」と言うではありませんか。何だそれはと聞くと、スパゲッティとマカロニとご飯と豆と…、などとむにゃむにゃ言います。とりあえずそれを頼みました。

買ってきてもらった容器を開けてみると、軽くびっくり。容器の中は確かにスパゲッティとマカロニとご飯と豆の四層構造になっていて、ほぼ炭水化物。ビジュアルにとまどいつつも、しかしふりかけられた揚げタマネギとトマトソースが美味しくて、気がつくと全部食べていました。

いつにない満腹感がありましたが、そのあとの胸焼けのひどさったらありませんでした。結局3年間、職場で200回はコシャリを食べましたが、最後まであまり美味しいと思ったことはありません。

値段も50円くらいなので文句を言ったらバチがあたりそうですが、実はモハンディシーンに驚くほど美味しいコシャリを売る店があって、ある日それ (写真) を食べた時は「今まで食べてきたコシャリはなんだったんだ!?」と激しく落ち込んだものです。

それからしばらく、職場近くで買ってくるコシャリが食べられなくなったことは言うまでもありません。

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カバブギーのハト

「エジプトにうまいものなし」という格言があるとかないとか・・・(いやないです)。しかしひとつだけ、心の底から美味しいと思うものがあります。それは、カイロのゲジラシェラトンにあるレストラン「カバブギー」。

ここの焼きたてパンとハトのグリルは、もう絶品中の絶品。一度食べたら忘れられない美味しさです。単に肉を炭火で焼いただけなのに、よくぞここまで美味しくなるものだと、何度食べても顔がほころびました。

平和の象徴であるハトを食用にするのはどうかという意見もありますが、この美味しさの前では問答無用です。もちろん、ハトといってもその辺の公園にいるのを捕まえてくるわけではなく、ちゃんと肉用に飼育されたものです。

エジプトに行くと、小さな穴がたくさんあいていて、棒がニョキニョキはえている塔をあちこちで見かけますが、これがハトの飼育小屋です。エジプトでは、ハトはご馳走としていろいろな場面で食べられています。

ハトはエジプトを代表する料理と言っても過言ではありません。レストランのテラスからピラミッドを眺めながらハトを頬ばる、これなどまさにエジプト旅行の醍醐味です。

カイロには、それこそ星の数ほどハトを食べさせるレストランがあります。しかし、そのほとんど、極論すればカバブギー以外は、残念ながらどこもハトの美味しさを引き出せているとは言えません。

ガイドブックにのっている有名店でも、基本的に火を通しすぎています。肉の新鮮さに自信がないから焼きすぎてしまうのでしょうか。味付けもしょっぱすぎるか何も塩をしていないか。

単純な料理ゆえ、美味しく作るにはずいぶんコツがいるのだろうとは思いますが、こうもことごとくまずいと、逆にまずくつくるヒケツがあるようにも感じます。あるいは外国人への嫌がらせとか (←被害妄想)。

というわけで、その分カバブギーの存在はありがたかったです。エジプト生活は食べ物含めストレスばかりだったので、わずかでもこういうお店があるのはありがたかったです。

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カイロのイフタール

「Breakfast (朝食)」とは、その名が示すとおり「Break (破る) - Fast (断食)」ですが、その昔ヨーロッパでは夜の間食事を絶つ習慣があったため、朝食べるご飯をこう呼んだのだそうです。

イスラム諸国では、ラマダン (断食月) の期間、日没後に食べる食事を「イフタール (Breakfast/朝食)」と言います。ラマダン中に「明日 Breakfast を食べに行こう」と誘われたら、それは朝食ではなく、夕食のことです。

カイロのハンハリーリスークは観光客が必ず一度は行く有名なスーク (マーケット) です。ラマダン期間中は各レストランがこぞって広場にテーブルを並べ、イフタールの食事セットを売り出すのですが、それを狙って観光客から地元人まで大勢が集まります。

ハンハリーリのイフタールメニューは有名ですから、日没の1時間近く前に行かないと席が確保できません。席を取ったら、何も口にせずじっと日没を待ちます。なにしろ周りには観光客以外にもエジプト人がたくさんいます。彼らが最後の我慢をしているときに、こちらが水など飲んではさすがに失礼です。

日没の10分くらい前から、テーブルにはイフタールの食事セットが配られます。辺りにはシシカバブの香ばしい匂いが立ちこめ、空腹のあまり頭がクラクラしますが、ここはあと少しの辛抱です。日没を迎えると、ハンハリーリの真横にあるフセインモスクから「アザーン (礼拝の呼びかけ)」が聞こえてきますから、それを合図に食事が始まります。

しかしいきなりシシカバブにかぶりついてはいけません。食事と一緒に配られた、甘いデーツ (ナツメヤシ) のジュースをゆっくり飲み干し、胃の調子を整えてから食べ始めるのがイスラム流です。

ハンハリーリ周辺は普段からにぎわっているところですが、ラマダン中はひときわにぎやかさを増します。空き地という空き地を人が埋め尽くし、それぞれのイフタールを楽しんでいます。食事の後は音楽会やダンスなど、毎晩いろいろな催し物が目白押しです。イスラム教徒にとって、ラマダン (断食月) は宗教行事であると同時に、一種のお祭りのようなものだと思いました。

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