A Dog's World 

~海外で暮らす・日々の記録・旅の記憶~   

サウジアラビアのグルメ

カブサ

アラビア半島の人はお米をよく食べますが、代表的なお米料理がカブサ (Kabsa) です。ヒツジを煮込んでスープをとり、そのスープでご飯を炊きます。大きなお盆にご飯を山盛りにしたら、煮込んでとろとろになったヒツジ肉をのせてできあがり。

日常的によく食べられている料理ですが、結婚式などお祝いの席となれば、あたりまえのようにヒツジが丸ごとのっています。丸ごとというからにはもちろん頭もついています。ヒツジの目玉と脳みそはもっともおいしい部分とされ、その日のゲストが食することになっています。

カブサはスプーンを使って食べても良いのですが、豪快に右手ですくって食べるのも良いでしょう。それは失礼にあたらないばかりか、むしろ喜ばれることの方が多いはずです。カブサを食べる時はたいがい大きなお盆のまわりに車座になって座ることが多いのですが、その時、あぐらではなく片膝を立てて座るとより多くの人数で盆を囲むことができます。

ちなみに、煮込んだ肉のかわりに、蒸し焼きにした肉をご飯の上に乗せたものをマンディーといいます。個人的には肉のうまみを存分に味わうことができるマンディーの方が好きですが、カブサのとろけるような肉も、やはり捨てがたいです。ああ、書いている側からヒツジが食べたくなってきた!

サウジアラビアでよく食べられている肉は一番がヒツジ、次いで鶏肉です。牛肉は値段も安いのですが味もそれなりで、あまり人気はありません。ヒツジ肉と聞くと、独特の臭みを思い浮かべる人が多いと思いますが、日本で売られているものと違って、中東のヒツジは本当に美味しいと思います。

ひと口にヒツジと言ってもその種類はたくさんあって、羊毛をとるもの、ミルクをとるもの、そして食用のものと、用途によって様々な種類が生み出され、また1頭の値段もピンキリです。サウジアラビアでは年に1回、ヒツジの国際マーケットがあって、そこで競り落とされる最高級のヒツジには、なんと数百万円の値がつくのだそうです。

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砂漠のトリュフ

例年に比べてかなり雨がたくさん降った1996年1月、リヤド。ある日の新聞に「砂漠のトリュフ」という記事が載りました。それは大変貴重なキノコで、特殊な草が生える一部の砂漠地域にごくわずかできるものとのことでした。それがこの雨で、何年ぶりかの豊作が期待されているそうです。

珍しい食べ物があるものだと、その時はさほど気にせずにいたのですが、何週間かして町の中心部にあるバトハスークに出かけてみると、いつにない人だかりです。袋や箱があちこち並べられ、売り手と買い手が熱心に商談しています。のぞいてみると、ジャガイモのような茶色いものがごろごろと山積みになっていました。

「砂漠のトリュフだ!」そうピンときて、卵くらいの大きさの物をいくつか買って帰りました。家に帰ってまじまじ眺めてみると、確かに土の中で育ったキノコの仲間なんだろうとは思いましたが、はたしてトリュフなのかと言われれば、どうも自信がありません。というか、これまでトリュフをトリュフだと感じるくらいの大きさで食べたことがありません。

半分に切ってみると、においはかなり濃厚なマッシュルームといった感じです。そういえばトリュフのにおいって知らなかった、などと今更気がついてしまいましたが、とりあえず、いくつか調理してみることにしました。

最初は丸のままいく勇気がなかったので、細かく刻んでバターといため、ステーキ用のソースを作りました。できあがったものは、まぁおいしいことはおいしいのですが、においも薄くなって、どうもパンチがありません。

そこで、アルミホイルに包んで丸焼きにしてみましたが、これはなかなかのものでした。においは十分残っているし、シイタケなど一般的なキノコとは違い、なんともほこほことした食感でした。

やっぱりイモの仲間かな、と思って翌日職場にそれを持っていくと、年輩のスタッフから「あぁ、それはファガア (イモ) だな、うまいだろ」と言われました。ファガアがイモなのかキノコなのかはわかりませんが、いずれにしてもそれが欧米人の間では砂漠のトリュフと呼ばれ、ものすごく有名な、しかしなかなか手に入らない幻の食べ物として渇望されているのだそうです。

この年はファガアの当たり年で、3月になるとソフトボール大のものまで出回るようになりました。さすがにそこまで大きいものになると、キロあたり1万円もしていました。

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ベドウィン料理

サウジアラビアの首都リヤドは、砂漠に囲まれたオアシス都市です。ひと口にアラブといってもいろいろな食文化がありますが、リヤドのそれはベドウィン料理そのものです。リヤドには、シャアビーヤレストランという、純サウジアラビア料理を売りにしているお店がありました。

レストランの内装は、日干しレンガで装飾された外観とともに、古き良き時代のサウジアラビアの伝統家屋を模しています。時に砂漠の旅人を、死に至らしめる激烈な太陽光は分厚い土壁に遮られ、店内は薄暗闇に包まれていました。

地面にしかれたカーペットに腰を下ろし、香炉から立ち上る香りを感じながら、装飾が施された肘掛けに寄りかかれば、気分はもうアミール (王子) とアミーラ (お姫様) です。

メニューを開くと、一般的なアラブ料理に加えて、サウジアラビアの伝統料理というページがありました。サウジアラビアといっても、リヤドがあるアラビア半島中心部、ネジド地方の伝統料理です。

まずはヒツジの足のスープ。スープの中にヒツジの足先が入っていますが、豚足と同じようにけっこうゼラチンがあります。スープの味付けは、コンソメスープに漢方胃腸薬を入れたような味。見た目はちょっとアレですが、かなり美味しくいただきました。

メインディッシュは、ゆでた小麦粉の団子を肉のエキスで味付けしたような、ちょっと変わった料理でした。味も悪くはなかったのですが、いかんせん見た目が貧相と言うか、だいぶグチャッとした見てくれの料理でした。

ここは何より建物の雰囲気を楽しむお店です。100年前にタイムスリップしたようなあの独特な空間は、何物にも代えがたい貴重な体験になるでしょう。

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豆は美味しい

サウジ人の友達に誘われ、豆料理専門店に行ってきました。カラハ (Kalaha) レストランという名前は、サウジ人にとってもあまり聞き慣れない名前だそうで、オーナーはヨルダン系とのことでした。

同じ料理であっても、ヨルダン、シリア、レバノンは他の地域に比べてひと味違います。食は北アラブにあり、というのがアラビア半島人に共通した考えです。今回もヨルダン系レストランと聞いて、俄然期待が高まりました。

店のメインディッシュは、フール、ホンモス、ファラーフェルという、アラブの食生活には欠かせない豆料理三品です。フールはソラ豆をオリーブオイルやスパイスと煮込みどろどろに煮崩したもの (温かい料理)。

ホンモス (ホンモス・ビッタヒーナ) は茹でたヒヨコ豆をオリーブオイルとゴマペーストやニンニクなどのスパイスと混ぜてペースト状にしたもの (冷たい料理)。

ファラーフェルは、エジプトではタアメーヤとも言いますが、ソラ豆などから作ったいわばコロッケで、揚げたては殊の外美味しく感じるところも、コロッケに似ています (冷めたらちょっと…)。

専門店というだけあって、この三品にはそれぞれ何種類もバリエーションがありました。フールならエジプト風、シリア風、ゴマ風味、エルサレム風。ホンモスはベイルート風、肉入り、松の実入り。

そしてファラーフェルは、スパイシーな炒めタマネギを具として詰めたものなどです (ファラーフェル・マハシーヤ)。これは自分も初めて食べたし、サウジ人の友達も他の店では見たことがないと言っていました。この日食べたものの中では一番おいしかったです。

この日は、フールとホンモスを数種類ずつ頼み、他にもシャクシューカ (トマト入りスクランブルエッグ)、肉入りバンドゥーラ (焼きトマト) など、食べきれないほどの料理を堪能しました。

ヨルダンに2年住んでいた身としては、やはり本場にはかなわないかも、と思ったりもしましたが、写真のように見た目はシンプルなのに、やはりリヤドの他の店で食べるものとは味が違うなぁと、ヨルダンの実力をあらためて感じたのでした。

ちなみに、料理が来るといい匂いに我慢ができずすぐに手を伸ばしていたので、「あ、写真撮らなきゃ」と気がついたときにはちょっと食べ散らかした感じになっていて見た目が悪いです。悪しからず。

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ブハーリーライス

サウジアラビアの生活で、週に3度は利用しているのが「ブハーリーレストラン」です。市内至る所にありますが、すべてが同じチェーン店というわけではなく、共通しているのは「ブハーリーライス (Ruzz Bukhary)」という炊き込みご飯を出すことです。

その由来は、ウズベキスタンのブハラ州にあると言われています。この地域は8世紀初頭にはすでにイスラム帝国領となっており、古くから多くの巡礼者がマッカを訪れていました。そんな彼らが残していったのが、ブハーリーライスのレシピです。

長粒米をチキンスープと香辛料で炊きあげたもので、それだけでは薄味ですが、噛めば噛むほどじわっとおいしさが口の中に広がります。普通はローストチキンやシチューなどをおかずとして頼みます。

写真はライス1人前とハーフチキン。野菜はおまけでついてきます。1人前にしてはご飯の盛りが良すぎるので (丼3杯くらい)、「ライス半分、値段も半分」というオーダーができれば良いのにといつも思います。でも、これで値段は10リヤル (300円) ですから、ご飯のみだとたぶん2~3リヤルでしょうか。半分にしてもたいしてトータルの値段は変わりませんね。

それにしても、ご飯を焚く釜が大きいこと。どの店も直系1メートルほどの釜が3~4個あります。「ご飯くらいは好きなだけ食べてくれ」という気持ちの表れなんでしょう。ありがたいけど、また太ってしまう…。

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サウジアラビア料理

リヤドに再赴任してから半年間、職場で「サウジアラビア料理ってどこに行けば食べられる?」とことあるごとに聞いていたのですが、一度も的確な答えをもらったことはありませんでした。逆に、「そういえばサウジアラビア料理と言い切れる食べ物ってなんだろう」と悩んでしまう人も多かったです。

もちろん、これまでもたびたびお世話になってきた「ブハーリーライス」や、結婚式には欠かせない「カフサ」と「マンディー」がそうだと言えるかもしれません。ただ、これらの米料理はカタールにもあったし、サウジアラビア料理と言うより「アラビア半島料理」といった方が適切でしょう。

また、今では当たり前のように米料理を食べているサウジ人ですが、もともと稲作文化があったわけでもないこの国にここまで米食が広まったのは、原油収入が飛躍的に増え、アジアから出稼ぎ労働者が百万人単位で入ってきた1970年代以降のことではないかと思います。

その時から町にはアジア人労働者のためのレストランが無数にでき、またサウジ人の家庭に入ったメイドやコックが頻繁に米料理を作ったことは想像に難くありません。

なので、そういう環境で育った今の若い世代にとっては、例えば100年以上前から食べられているもサウジアラビア特有の郷土料理と言えるものがあるのかどうか、そしてそれはどこに行けば食べられるのかなどということは、あまり関心がないのかもしれません。

それはさておき、最近知ったレストランの紹介を。店の名前は「Al-Mazrah」。「マズラア (農場)」というだけあって中はとても広々した敷地で、コテージ風の小部屋やマジュリス風のテントルームがたくさん並んでいます。

客は絨毯の上に車座になって食事をいただくスタイルで、なんとも雰囲気がよろしい。敷地の一角には馬がつながれていて、おそらくリクエストすれば乗れるんじゃないかと思います。食事中、風向きによってはプーンと馬の匂いが漂ってきましたが。

メニューにおなじみのアラブ料理が並ぶ中、「シャアビーヤ (国民の)」という項目に3品がありました。それが「グルサーン (Qursan)」、「ジャリーシュ (Jarish)」、「マスルーサ (Mathlutha)」です。

「グルス」は丸くて平べったい薄焼きパンのことなので、グルサーンはたぶんそのパンをちぎってトマトソースで煮込んだ料理。ジャリーシュは「つぶした麦、米」というその意味の通り、麦のおじやといった料理。マスルーサはこの2品の上にご飯をドサッと盛りつけたものです。

グルサーンは2枚目の写真の茶色い方。焼いたパンの香ばしさとチキン、トマト、野菜の旨味がマッチしていて、あっという間に食べてしまいました。そして白い方がジャリーシュ。何も入っていないシンプルなおじやですが、口に入れるとほんのりミルクとバターの風味が広がり、見た目以上に満足感のある一品。絶妙な塩気で味付けされていました。美味しかったけれど、何かおかずもほしかったなぁ。今回は"純"サウジアラビア料理という趣旨だったので、これ以外頼みませんでした。

ちなみにもうひとつ2枚目の写真に写っているオレンジ色のは「クナーファ」というデザート。ヨルダンで食べたクナーファはココナッツの下がモッツァレラみたいなフレッシュチーズで、本当はそれが正解のようですが、マズラアレストランのものは固めのライスプディングのようでした。まあこれはこれで。

ということで、久しぶりにグルサーンを食べましたが、昔シャアビーヤレストランで食べたものよりずっとおいしいと思いました。見た目もちょっと違っていたし。コックがサウジ人ということはないでしょうし、ヨルダン人とかレバノン人のコックが料理しているのだとしたら、何かが変わってしまうのも仕方ないことですね (味は良くなっていると思いますけど)。

伝統的な"純"サウジアラビア料理の味が、どこかで引き継がれていることを願わずにはいられません。というのも、「奥さんから娘に家庭の味って教えるの?」とサウジ人に聞くと、だいたいいつも「うーん、たぶん…」という微妙な答えしか返ってこないので。

確かに、ほとんどの家庭にメイドさんがいて料理はお任せできますから、奥さんが自分で料理する必要はあまりないのかも。というか、職場スタッフのお母さん世代ですら、すでに子供時代にはメイドさんがいたでしょうから、そもそもが怪しいかも。

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マンディー

カブサと同じくサウジアラビアの代表的なお米料理であるマンディー。以前、砂漠のテントで友人に作ってもらったマンディー (鶏) は次のようなものです。密閉した釜の中で炭火で蒸し焼きにした肉をご飯にのせて出すのが正しいマンディーのようですが、地面に穴を掘って釜にすることや肉汁でご飯を炊くことが絶対条件なのかどうかはわかりません。

①半分に切ったドラム缶を地面にうめる (常設)。
②ドラム缶の底で火をおこし、炭火にする。
③大きな盆に洗った米をしきつめ、中に置く。
④丸鶏にスパイスと塩コショウをまぶす。
⑤お米の上に丸鶏をつるす (写真参照)。
⑥ドラム缶にフタをして、土をかけうめる。
⑦3~4時間したらフタを開け中から取り出す。

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鶏から脂と水分がポタポタ落ちるので、お米を炊くための水はほんのわずかでいいそうです。この時もそうだと言っていましたが、芯も残らずおいしく炊きあがりました。下手な人はつい水をたくさん入れすぎて、ご飯がベチャベチャになってしまうのだとか。

この時は鶏でしたが、パーティーで出されるのはやはりヒツジが多いです。焼き上がった肉はいぶされていてとても香ばしく、カブサの茹で肉よりずっとジューシーな仕上がりになります (もちろんうまく調理すればですが)。カブサはジューシーというよりトロトロの食感。

この時も友人は4時間近くかけてじっくりと調理してくれたのですが (実際には彼が雇っているインド人)、本式にやろうとしたら個人ではなかなか大変です。ベドウィン伝統の由緒正しい料理ではありますが、現代の家庭料理とは言い難いかもしれません。

しかしこのスモーキーな味わいはサウジ人の味覚をしっかりととらえており、あいかわらずパーティーではカブサとともに威風堂々、メインディッシュの地位を保っています。

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そんなわけで、家の近所にあって前々から気になっていたマンディー屋に行って、マンディーをテイクアウトしてきました。レジで 「アボガー・マンディー・サファリー (マンディーください、テイクアウトで)」 と伝えると、まずラハム (ミート=ヒツジ) かダジャージュ (チキン) か聞かれ、続いて「カム? (いくつ?)」 と聞かれました。「ワーヘド (ひとつ)」 と伝えると、すかさず 「アルバイーン (40リヤル=1040円)」 と言われたので、びっくりして思わず聞き返してしまいました。

普段食べているブハーリーライスはハーフチキンをつけても11リヤル (290円) です。マンディーは格式の高さが違いますから多少は高いとは思っていましたが、予想よりずっと高かったです。家に帰ってきて包みを開けてみると、肉はそれほどたくさんとは言えませんが、まぁ、一人分としては十分な量です。驚いたのはご飯の量。どう考えても食べきれる量ではありません。客人が食べきれないほどのご飯を出すという、ベドウィンの伝統にのっとっているのでしょうか。

ご飯は肉のスープで炊いたものでしょう。噛めば噛むほど旨味が口に広がります。肉の方はスモークの香りが効いていて、きちんと作られているなという印象。適度な塩味がついたジューシーな肉は、柔らかくて最高の仕上がりでした。お米もバスマティライスの香り立つ一級品。肉は生後ほんの数ヶ月の子ヒツジ (肋骨がか細かった) で臭みがなく、脂がさっぱりしていて甘い。レバーとモツも入っていたし、40リヤルの価値は十分にあったと思います。ブハーリーとは見た目があまり変わりませんけど、やっぱりおいしいな、マンディー。しかしご飯はかなり残してしまいました。

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黄昏のシャワルマ

リヤドにシャワルマ屋は数あれど、当時はヤマール・アッシャーム (Ya Mal Assham) がもっともおいしい店だろうと思っていました。サウジ人に 「そうだよね?」 と聞くと、みんな大体 「そうそう!」 と言ってくれたし。そして再びのリヤド生活。地域の開発とともに当時通っていたお気に入りのレストランはその多くがなくなっていて、ヤマール・アッシャームもそんなもののひとつでした。

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この1年、シャワルマはもっぱら家の近所で買っていますが、特に疑問も持たず、十分おいしいと思って食べています。ただ、時々ヤマール・アッシャームのシャワルマを思い出すこともありました。今食べているものとどう味が違うかはうまく言えませんが、とにかく昔食べていたシャワルマはもっともっと美味しかったような気がします。

ある日、サウジ人の旧友と会った時、10年たってリヤドもずいぶん変わったという話題になりました。その中で彼は、「町も人も変わったけれど、シャワルマのように町で食べる食べ物の味が変わった、昔の方が美味しかった」としみじみ言っていました。なんとなく自分もそんな風に考えていていたので、「やっぱりそうだよねぇ」と深くうなずいてしまいました。

その後もずっとシャワルマは家の近所で買っていたのですが、先週、オレイヤ通りを走っていた時、アカリヤ交差点のすぐ先に巨大なヤマール・アッシャームの看板を見つけてハッとしました。何度か通っている道なので今まで気がつかなかったのが不思議なくらいですが、当時の小さな店とくらべたらとんでもなく大きく、そしてお洒落な外観だったので、意識に入ってこなかったようです。

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数日後、そこが当時の店 (の発展型) なのかはわかりませんでしたが、とりあえず行ってみることにしました。近くの路上に車を止めて店に入ると、外観も大きいですが店内もかなり広めで20m×20mくらいありました。シャワルマ屋というよりはアラビックのファストフードを手広く扱うお店で、テイクアウトもそうですが店内のテーブルで食べている人もたくさんいます。若者が多いし学食のような雰囲気でした。

レジでメニューを見るとサンドイッチ系のものだけでもかなりの数で、レバー、タン (舌)、ブレイン (脳) など個人的にそそるものがたくさんあります。いろいろ迷ってシャワルマのチキンとミート (ラム)、それにレバーサンドイッチを頼みました。どれもひとつ4リヤル (104円)。残念ながらタンとブレインはありませんでした。もっと人が混みそうな夜の時間帯にくればあるのかな。

久しぶりのヤマール・アッシャームのシャワルマは、値段が1リヤルアップしてるわりにサイズダウンしていることと、前は筒状にきちっと丸められていたものが三角っぽくふわっと巻かれていることに多少の違和感を感じましたが (やっぱり違う店?)、なかなか美味しくいただきました。

微妙に残念感はありつつも、家の近所のシャワルマ屋よりはやっぱり美味しいかなと思ったりしたわけですが、当時の強烈なイメージ、味もそうですがどでかいチキンシャワルマが堂々と3つも並んでいた店内の、シャワルマにかける意気込みがひしひしと伝わってきたあの頃の熱気のようなものがほとんど感じられず、一抹の寂しさを感じたことも事実です。

古き良き時代は過ぎ去ってしまったのかと思う反面、変わったのは自分の方かな、などと妙に黄昏れてしまいました。

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砂漠のトリュフ再び

世界三大珍味、あるいは台所のダイヤモンドともいわれるトリュフ。フランス産黒トリュフとイタリア産白トリュフが世界的に有名ですが、世界には同種のキノコが30種以上あるそうです。

中東地域では、古くは古代エジプトのファラオが食したとパピルスに記され、またアラビア遊牧民の間でも、砂漠で採れるこの貴重なキノコは昔から珍重されてきました。欧米人はこれを 「砂漠のトリュフ (Desert Truffle)」 と呼んでいますが、現地の名前はいろいろです。

-テルフェズ (モロッコ)
-テルファス (エジプト西部の遊牧民)
-ファッガ (クウェート)
-ファガア、ファグウ (サウジアラビア)
-ハラスィ (サウジ東部) ※ローカルの品種名 (黒)
-ズバイディ (サウジ東部) ※ローカルの品種名 (白)
-カマー (シリア)
-キマー、チマー (イラク)
-ファガ、ズバイディ (オマーン)

ファガアの香りは濃厚なマッシュルームあるいはナッツの風味といった感じで独特のねばっこい匂いですが、実際は香りを楽しむよりファガアそのものを食べることが目的となります。火を通して食べると栗のようなホコホコした食感と甘味が口に広がって、何より大粒なのでなかなか食べ応えがあります。

何種類か調理法を試しましたが、結局丸のままオーブンで焼くのが一番美味しいと思いました。卵くらいの大きさなら220℃で20分くらい。焼けたら半分にカットして、熱いうちにスプーンですくって食べます。お好みで醤油をたらしてもいいでしょう。焼くのを10分くらいにすればよりフレッシュな香りとサクサクした食感が楽しめ、30分焼くと一段と汁気が分離して旨味が増しますが、香りはだいぶ飛んでしまいます。

ちなみに皮はパリッとしたままなので、手で持って食べられます。皮には砂がたくさんついているので食べられません。アルミホイルを巻いて焼くと食感がグニュグニュした感じになるのでおいしさ半減と思いました (好みでしょうけど)。ベドウィンはそのまま火の中に放り込んだら数分で取り出し、ガブリと豪快に食べるそう。通ほどあまり火は通さないようです。

他に試したのは、ファガアを薄切りにして熱いお吸い物を注ぎしばらく蒸す方法。これもサクサクと食べられておいしかったですが、香りはあっという間になくなりました。もうひとつは厚めに切ってソテー。これもなかなかいいですが、どうせならもっと大きいものを買って、分厚くした方がおいしいと思いました。でも、大きくなると値段が跳ね上がるんですよね。シーズンはこれからなので、まだちょっと様子見です。

それにしても、道ばたで売っていたファガアを我ながら目ざとく見つけたものです。おかげで13年ぶりの珍味を堪能しました!

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ナジュドビレッジ

「ナジュドビレッジ (Najd Village)」 はアラビア半島内陸部、ナジュド地方伝統の建物を模したレストランです。サウジアラビアはドアの装飾が特徴的で、国立博物館にもドアコレクションが展示されているほど。メニューはナジュド料理がメインで、ここまでサウジアラビア料理がそろっているレストランはなかなかありません。

思っていた以上にメニューが多かったこととどれも見た目が似通っていたため、一通り料理の名前を聞いた後にみんなでお皿を回しあって配置がバラバラになったら、もうよく分からなくなってしまいました。しかも写真を撮ったと思っていたら実はまだ撮っていないものもあったりして、みんなで一緒になって 「あれ?、これ違う料理?」 などと言い合いながら食べたのでした。

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サウジ国産ハンバーガー

アメリカにマクドあり、そしてサウジにハルフィーあり。ハルフィーは創業27年、サウジアラビア純国産ハンバーガーチェーン店です。全国に120店舗を展開し、名実ともにサウジアラビアNo.1ファストフード店です。

以前リヤドにいた時もその看板はかなり目にしていたのですが、「何もわざわざハルフィーに」という失礼な気持ちを抱いていたため、一度も入り口の扉をくぐることはありませんでした。

そして今回、離任まであと数日とせまったこの時期に、「何でわざわざハルフィーに」と思わないでもありませんでしたが、これを逃せば一生その味にふれることはないと気を取り直し、家から一番近いお店に行くことにしました。以下、コメント。

【サービス】
なかなか注文が・・・。若者がばんばん横入りするし、レジのサウジ人の兄ちゃんはこちらを完全無視だし、この国においてアジア人労働者が置かれている立場が少し理解できました。他のファストフード店よりサウダイゼーション (労働力のサウジ人化) が進んでいるため、こんなことになっているのかも。ほめていいんだか悪いんだか。

【味】
ひどいサービスとは裏腹に、味についてはバーガーキングのワッパーに似ていて美味しかったです。トマトとマヨネーズがたっぷりで、玉ネギ、レタス、ピクルスも大きめ。パンもこだわりの自社生産で甘味があって美味しいし、とにかく全体のバランスが良い。ビッグマックよりは断然こちらの方が美味しいと思いました。

ポテトはなんだかコクがなくていまいちだなと思ったら、袋に「コレステロールフリー」の文字が。なかなかあなどれません。世界進出もいけるんじゃないんでしょうか。というかそうすれば店員もサウジ人ではなくなるから、絶対にその方がいいでしょう。

【ロゴ】
ハンバーガーのようなロゴは、アラビア語の 「H (ハー)」 です。ハルフィーのハ。外人の間ではハーフィー (Herfy) と言うのが一般的ですが、アラビア語の発音はハルフィー。

ちなみにスーパーハーフィーではなく、スーバルハルフィー。ボテトとビブシもついてるよ。P音がないってちょっと不便。

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ガホワ(アラビックコーヒー)

アラビア湾岸諸国では「アラビックコーヒー」がポピュラーです。コーヒーはコーヒーですが、煎った豆を荒くつぶしカルダモンと一緒に煮出したもので、色は緑がかった黄色、いわゆるコーヒーの香りはあまりしません。これをコーヒーと言われて出されると、たいていの人は「ん?」と思うようですが、アラビア語で「ガホワ (Qahwa)」」と言われ、ベドウィンスタイルのテントで乳香を炊きながら飲んだりすると、しみじみ「うまいなぁ~」と思います。

一度にあまりたくさん飲むものではなく、カップもおちょこのような大きさです。お客さんの前で、アラビア風の金のポットを高々と持ち上げ、できるだけ細く糸のように注ぐのがこちらのスタイルです。一緒に食べるのはもちろんデーツ (ナツメヤシの干した実)。ガホワの渋さとデーツの甘みが口の中で渾然一体となっていく感覚は最高です。まぁ、渋茶に干し柿といった感じでしょうか。

ちなみにこのガホワ、「もういらない」と言うときはカップを返すとき空にしたカップを左右にちょこちょこと振ります。これをしないと延々コーヒーをつがれることになりますのでご注意を。

写真はリヤドのダウンタウンにあるマスマク城の正面に店を構えるマクハー (喫茶店) のものです。

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デーツ

デーツ (Date Palm/ナツメヤシ) はアラビア遊牧民にとってなくてはならない植物です。デーツの木は20~30mまで成長し、8年目から実をつけはじめ、30年で成木になります。寿命は100年程度。1房に200~1000個の実をつけ、1本の木で年間200kg以上の実を産出するものもあります。

果肉の部分には、約58%の糖分とそれぞれ2%の脂肪、タンパク質、ミネラルが含まれます。大切な栄養素はほとんど含まれていると言われているように、昔のベドウィンはデーツとミルク (ヒツジorラクダ) さえあれば生きていけたそうです。栄養満点なので、産後の肥立ちにも良いのだとか。

また、デーツの葉と葉柄はかごや枝編み細工、バッグやマットの材料となります。繊維からはロープがつくられたり、コーヒーポットの注ぎ口に詰めてフィルターの代わりにもなります。アラビア遊牧民はデーツがあったからこそ、砂漠地域でずっと暮らしてこれたのです。

デーツの本場と言えばやはりサウジアラビアです。専門店には何種類ものデーツが並び、さらにデーツを使ったお菓子、ジュースなどもあります。ミカンやリンゴがそうであるように、デーツも様々な品種があります。

自分がリヤドにいた当時、キロあたりの値段が一番高いものは聖地メッカ (マッカ) 産のものでした。粒長は6~7cmとかなり大きめ。口に入れただけで歯がズキズキと痛くなるほどの激甘デーツは、大の甘党のサウジ人にはこの上ないものです。自然の果実でここまで糖度が高いものは他にないのではないでしょうか。干し柿など比べものになりません。

サウジを離れた後、サウジに赴任した知人からもらったデーツは、大きめのサクランボといった感じの丸型でした。初めて見るデーツでしたが、口に放り込むとまるで黒砂糖のように奥深く滋味のある甘みでした。自分にとっては今のところ生涯最高の「甘いお菓子」です。その後、再赴任してたくさん食べました!

なかなか観光では行けないサウジアラビアに比べ、アラブ首長国連邦のドバイは行こうと思えばいつでも行くことができます。ドバイのDeira City Centerでサウジのデーツ専門店「バティール (Bateel)」を見つけた時は喜び勇んで店内に入りましたが、残念ながらこのデーツはありませんでした。個人的にはかなり美味しいと思うのですが、そこまで糖度が高くないのでアラブ人にはいまひとつ人気がないのかな。あるいは貴重すぎて輸出されていないとか。

逆にサウジ人に一番人気だったのは、ズバリ砂糖という名前の付いた「スッカリー」。普通デーツは十分に熟し、水分がとんで焦げ茶色にならないと渋くてとても食べられませんが、スッカリーは実が黄色くなってくれば十分食べられるほど甘いものでした (ちょっと渋みはありましたが)。

また、おそらくどの品種でも良いというわけではないと思いますが、まだ実が黄色いうちに収穫して、冷凍保存しながら熟成させるやり方もあります。冷凍で長期間保存しトロトロに熟した甘い実 (黄緑色っぽい) を、アラビックコーヒーと一緒に食べるのは最高の組み合わせでした。

デーツはスーパーマーケットでもいろいろ種類が売られています。食べ比べできるのも、サウジアラビア在住者ならでは。

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イラン料理(シラーズ)

リヤドのタハリヤストリートを1本入ったところにある、Sheraz (シラーズ) というレストランでイラン料理を食べました。といってもいわゆるアラブ料理なので、普段食べているトルコ料理やレバノン料理とくらべてもそんなに目新しいものはありません。メニューを見つつ、何かイラン料理らしいスペシャルな一品を教えてくれと店員にさんざん聞いたのですが、メニューにわざわざシェフのおすすめと書いてあるペルシャ風キャセロールとか一連の料理にはまったくふれず、普通にケバブとかミックスグリルをしきりとすすめられたので、そうなのかなぁと思いつつ、結局無難なケバブを選んでしまいました。

注文したもの
・ホンモス
・クークー (ほうれん草のチーズのせ)
・イラン風キノコスープ
・スルタン風チェロケバブ
・イランティー

普段行くような店より料理の値段は倍以上 (といってもそんなに高くはありませんが)、店内もなかなか高級な雰囲気が漂っています。何よりスープについてきたライムがちゃんとガーゼでくるまれています (絞ったとき種が落ちないように)。こういうお店は本当に久しぶり。ホンモスはきめ細かく口当たりがとてもマイルドで、ほうれん草の上にチーズをのせてオーブンで焼いたクークーも、こういう小技の効いた料理はヨルダン以来かも、などとちょっと嬉しくなってしまいました。

メインのチェロケバブは、普通のお肉とミンチにしたものが2種類。焼きすぎでケバブもコフタもパサパサのお店が多い中で、ここはちゃんとジューシーな焼き加減に仕上がっていました。定番料理をきちんとおいしく作っているのがいいですね。もう一度行きたくなりました。

ホンモス、クークー (ほうれん草のチーズ乗せ)、イラン風キノコスープ

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スルタン風チェロケバブ

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シラーズ再訪問。今度はメニューを吟味して、自分なりにイラン料理らしいもの (普段アラブ料理で見ないもの) を選んでみました。

バガリ・ポロ (ヒツジの足首の煮込み)
肉料理の中では煮込んだヒツジがかなり好きな方なので、これは本当においしかったです。味付けはシンプル。脂 (ゼラチン?) の部分はトロトロのプルプル、お肉もホロホロとくずれていきました。

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ホレシュト・サブジ (緑野菜のシチュー)
ディル (セリ科の1年草) を使ったシチュー。そら豆と仔ヒツジの肉が入っています。確かヒンディーでもサブジは野菜だったかな。インドといえばインドカレーのパラクパニールがわりと鮮やかな緑色なのに対し、こちらは黒ずんだ緑色。どこかほろ苦いようなオリーブのような味がしました。これがディルの風味なんでしょうか。乾燥レモンが入っていて、トマトの煮込みなどよりはるかにメリハリの効いた華やかな酸味がとても印象的です。アラブ料理で酸っぱいメインディッシュってあまり記憶にないので、これにはちょっと感動しました。いやはや、おいしかったです。

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ポルンベル (イラン風デザート)
お店で対応してくれたスタッフがフィリピン人だったので正確な発音はわかりませんが、生クリームにナッツと乾燥フルーツを混ぜて冷やし固めた、イラン風デザートです。砂糖はたぶん入っていませんが、なにしろ重たいクリームなので、ひと皿食べるのはけっこうしんどかったです。渋味が少なくまろやかなイラン紅茶と良くあいました。
ちなみにこのレストラン、メニューにはキャビアも3種類載っています。ベルーガで1万2000円の値段がついていましたが、はたして量はどれくらいなんでしょう。今度聞いてみようかな。ま、頼まないけど。

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レバノン料理(バールベック)

アラビア半島の人々にとって、レバノン、シリア、ヨルダンは料理がおいしい国として認知されています。この3ヶ国の料理はおおよそ共通していて、チーズ、オリーブ、野菜、ヨーグルト、レモン、ゴマ、ハーブ類を使った前菜が充実しているのが特徴です。

いわゆるアラブ料理といえば、基本的にはレバノン料理のことをさしているように思います。サウジアラビアのホテルでアラビアンビュッフェを食べる時にどこの国の料理かたずねると、いつもレバノンだと言われますし。

そんなわけで、いつも漠然とアラブ料理だと思って食べているものではなく、レバノン料理、つまりレバノンにしかない料理を食べたいと思って、リヤドのオルーバロードにあるレストラン 「バールベック」 に行きました。

これまで何度もシェラトンやメリディアンなど高級ホテルで美味しいアラブ料理 (レバノン料理) を食べていますが、たとえばエジプトのハト料理やサウジアラビアのカブサのように、際だって特徴のあるレバノンオリジナルの料理にはお目にかかったことがありません。

実はバールベックにも特別なレバノン料理があるかどうか情報があって行ったわけではなく、ガイドブックにレバノン料理とわざわざ書いてあったことと古くからあるお店なので、もしかしたらと期待を抱いて行ったわけです。どちらかというとバールベックという名前だけで決めたところも。アラビア語以前の神話の匂いを感じさせる品の良い響きがグー。

瀟洒な外観を持つバールベックの店内はいたってシンプル。テーブルが少なく店員も二人だけだったのでいきなり不安になりましたが、案の定、メニューをもらって見てみるとそもそも料理がかなり少なめでした。前菜も15品くらいしかありませんし、メインディッシュも選ぶのに迷う必要がないほどオーソドックスなラインナップです。もちろんどれも食べたことがある料理ばかりでした。

アラブ料理、つまりレバノン料理は前菜が命です。この日はもともとメインディッシュには期待していなくて、何か珍しい前菜が食べられればいいなと思っていました。ヨルダンで食べた小鳥の丸揚げ、生クッベ、脳みそフライや、サウジで昔食べたヒツジの足首のスープのように、珍しくてしかも美味しいものを。

しばらく悩んだ末、結局頼んだものはレバノン風ソーセージ、シャンクリシュサラダ、ミックスグリルという平凡なものばかり。シャンクリシュはザアタル (直訳はタイムですがいくつか他のハーブを混ぜたものを言う時も) をまぶして保存するヤギのチーズです。

シャンクリシュ、オリーブオイル、トマト、タマネギを一緒に混ぜて食べると、酸味がかったチーズの風味とハーブの香りが渾然一体となって、複雑玄妙な味を楽しむことができます。ただ、この味は地中海料理とも共通していますね。きっとフェニキア商人がその昔地中海諸国にこの味を広めたんでしょう。あるいはいろいろな味を各国から持ち帰って、さらに昇華させたのかも。

レバノン料理はアラブ世界に広く浸透しているだけあって、逆に目新しさがなくなっていてその点はちょっと不利だなと思いますが、いつかもっといいお店を見つけてレバノン料理でしか味わえない味に出会ってみたいと思います。バールベックにはもうちょっと頑張ってほしい。ミックスグリルは冷めていた時点で評価に値せず。

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レバノン料理(ブルジュ・アルハマーム)

オルーバロードのレバノン料理店バールベックと同じ並びにあるもうひとつのレバノン料理店が 「ブルジュ・アルハマーム」 です。アラビア語のメニューをもらうと (英語はない)、メインディッシュとしてグリル以外にもスペシャルメニューが書かれています。

迷った末にその中からヒツジのマハシを注文しました。マハシというくらいなのでご飯が肉に巻かれているのかなと思ったのですが、出てきたものは写真の通り、ご飯の上に煮込んだヒツジ肉がどっさりのっているものでした。量がすごい・・・。

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あまりピリッとこない、アラブ料理独特のもっさりしたスパイスが効いた味付けご飯と、トロトロに煮込まれたヒツジ肉、そしてコクのあるグレイビーソースが渾然一体となって、半分くらいは美味しく一気にいただきました。次第に味に飽きてきたところで、今度は一緒についてきたヨーグルトをドッサリかけて食べると、なんともサッパリしてさらに食が進みました。

味付けご飯にヨーグルトって相性抜群 (のような気がする)。吉牛とかにも合うかな (←適当)。味も良かったし、英語のメニューがあればもっと外人が来るかなと思いましたが、アラブ人で十分混んでいたので、まぁ、今のままでいいのかもしれません。

ちなみにブルジュ・アルハマーム (ブルジュルハマーム) は 「鳩の塔」 という意味 (ハマーム=鳩)。3枚目の写真のような、アラブ風の鳩の巣箱 (集合住宅) ですね。アカバにも同じ名前のレバノン料理店があったと思いますが、アラブ料理店ではわりと良くある名前です。

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モロッコ料理(マラケシュ)

モロッコ料理は以前リヤドで食べた時に、やたらと薄い味付け (ほぼ塩気なし) にどれもミントが効いていて、その異次元の味に驚いてしまいその後まったく食べる気が起きなかったのですが、モロッコ料理は本来、レバノン料理やトルコ料理とともに、中東を代表する料理としてつとに有名です。

サウジアラビアに戻ってきて、リヤドのキングファハドロードを走るたびに「マラケシュ (Marrakech)」 というレストランの大きなアラビア語の看板が目に入ってくるのでその存在はずっと気になっていたのですが、ようやく重い腰を上げて行ってみました。もちろん当時食べたのとは別のレストランです。

マラケシュの店内はやや薄暗く、アラブっぽい調度品や壁にかけられたアラベスク模様のタイルなどでシックに装飾されています。ビルのエレベーターで3階に行き、扉が開くと目の前にレストランの入り口が現れるということもあり、なんとなく隠れ家的な雰囲気がただよっています。外から遮断されているので、サラー (礼拝) タイムもあまり関係なさそうでした。

ハリーラ (豆のスープ)
トマトベースのもったりとしたスープ。ラム肉が少し入っています。スパイスはコリアンダーなどを使っているようですが、ハーブの香りはあまりしませんでした。良く言えばくせがなく誰でも食べられるやさしい味、悪く言えばパンチに欠ける感じ。好きな味ですが、少し塩コショウを入れて食べました。塩コショウ入れがタージンを模したかわいい陶器だったので、ぜひ使いたかったということもあって。

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クスクス (ラム肉が載ったもの)
『クスクスは、硬質小麦の一種であるデュラム小麦の粗挽粉に水を含ませ、調理後の大きさが1mm大の小さな粒になるように丸めてそぼろ状に調整したものである。語源はマグリブ・アラブ語の kuskusu であるが、これはベルベル語の seksu (「良く丸められたもの」という意味) が元になっている。米国では通常パスタの一種として認識されているが、日本を含め他の多くの国では米やコーン、豆などの穀粒と同じように扱われることが多い。飯状に炊いたり蒸したりしたものが肉料理や野菜スープと一緒に供され、これがクスクス料理である。マグリブ地域の主食。-Wikipedia』

ということで、おそらくモロッコ料理で一番有名なのがクスクスではないでしょうか。上の説明のようにクスクスはご飯とほぼ同義語なので、クスクスの上に何をかけるかによっていろいろなバリエーションができます。マラケシュレストランのメニューにもラム、チキン、野菜など何種類かありました。いろいろ迷った末にラムを選択。昔食べたクスクスよりはそれなりに味がついていておいしかったですが、シンプルというか素材の持ち味を活かすというか、やはりかなりの薄味。肉、野菜ともにごく少量の塩で茹でただけのようでした。ハーブもほとんど入れてなさそう。

正直、ラムはもうちょっと塩気がほしいと思いましたが、逆に茹で野菜 (キャベツ、ニンジン、ズッキーニ、カブ、カボチャもしくはサツマイモ) の方は野菜そのものの甘味が感じられて美味しかったです。この野菜の多さは嬉しい誤算でした。レバノン料理とは趣がガラリと異なりますね。ただ、クスクスはボソボソしがちな食べ物なので、おかずの方はもっとジューシーなものがいいと思いました。これはあらかじめ予想していて、もう一品そんな感じの品 (タージン) を頼みました。

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タージン (タジン鍋)
エジプト料理でいうターゲンと同じものです (エジプトではJ音をG音で発音する)。ただしモロッコの方は土鍋のフタも含めてタージンのようで、必ず三角にとがったフタをしてテーブルに運ばれ、客の目の前でフタが開けられます。フタを開けた時に料理がグツグツ煮立っている様は、本当に食欲をそそります。

今回はクスクスがラムなのでハムール (クエのような白身の高級魚) のタージンにしました。メニューにはラムのタージン8種、シーフードタージン2種、チキンタージン4種がありました。ハムールとトマトソースの相性は言うまでもなく最高で、やや酸味が強いソースにパプリカとオリーブの風味がマッチしていました。

大きめのニンジンとジャガイモはほくほくして甘味が強かったです。あまったソースはクスクスにかけていただきました。トマトソースで食べるクスクスは殊の外美味しく、これが 「世界最小のパスタ」 ということを思い出したりしました。

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リヤドのモロッコ料理レストラン、マラケシュ再訪。

バスティーラ (Bastilla/Pastilla)
ハトや鶏の肉をタマネギ、卵、アーモンドなどと一緒にワルカ (紙のように薄いパイ生地) で包んで焼いたパイ。粉砂糖とシナモンをふりかけて食べるものが有名だそうで、メニューにもハトのバスティーラの写真にはそんな感じの模様が写っていましたが、気分的にシーフードのバスティーラをチョイス。残念ながら見た目はのっぺらぼうの大きなおまんじゅうという感じでしたが、逆にどことなくユーモラスで、ナイフを入れるのが忍びなかったです。

ひとしきり眺めた後、エイヤッと真ん中にナイフを入れると、パリパリッという小気味よい音が小さく響きました。中にはエビとイカと春雨がぎっしり詰め込まれていて、切った途端濃厚なシーフードの香りがフワッと立ち上ってきました。このところ連日アラブ料理を食べていてやや食傷気味でしたが、この香りに俄然食欲が出てきました。見た目はもっさりしていますが、油っこいという感じもなくペロリと食べてしまいました。

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タージン (タジン鍋)
前回のハムール (白身魚) に続いて、この時はコフタ (ラムの肉団子) のタージンを食べました。トマトソースで煮込んだコフタはまた格別で、塩味も濃いめだったので一緒に出された白いご飯があっという間になくなっていきました。実はテーブルに運ばれてきてフタをとった瞬間はグツグツ煮えていたのですが、フタを元に戻してとりあえずバスティーラから食べていたら、すっかり湯気もなくなってしまいました。写真で見る限りいまいちおいしさが伝わらなくて残念です。

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マラケシュレストランには普通のグリルメニューもあってまだまだ楽しめそうですが、スープ、メイン、デザート、お茶を頼むと100リヤル (2600円) 以上になってしまいます。「ブハーリーライス10食分かぁ・・」 などとつい貧乏性が頭をもたげてくる自分が悲しくなってきました。モロッコで食べたらクスクスなんてもっと安いんでしょうけどね。

実はその昔カサブランカに旅行したことがあるのですが、料理の値段どころか何を食べたかすら忘れてしまいました。物乞いの女の子に 「チノ、アン・ディルハム (おい中国人、1ディルハムくれ)」 と言われたことは憶えているのですが。ガイドブックも持たず、どこに何を見に行ったのかもさっぱり。写真はどこかの路地。

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またまたマラケシュ、こんどはデザート。

普段食べているアラブ料理でもクナーファやオムアリーなど美味しいデザートはいろいろありますが、リヤドのモロッコ料理レストラン 「マラケシュ」 で食べたあちら風のデザートを2品紹介します。

シェバキヤ (Shebakiya)
デザート盛り合わせの真ん中にある茶色いクネクネしたお菓子。アラビア語を忠実に発音するとシャバキーヤ。「網状の」 という意味の通りのクネクネした形です。ゴマの香ばしさとハチミツの濃厚な甘い香りに加え、爽やかな花の芳香が感じられました。柔らかめのかりんとうといった食感でかなり甘いのですが、香りが良いので 「これ何の匂いだっけ?」 と考えつつ食べていたらあっという間に3個なくなってしまいました。

しかしさすがにこのデザート盛り合わせはお店では食べきれず、シェバキヤの他に2、3個食べた他は包んでもらいテイクアウトしました。ナッツの粉を砂糖で練ったようなものが多く、甘かったですが渋茶と一緒においしくいただきました。甘い粉を固めたようなお菓子はアラブでは一般的ですが、ここのものはひと手間かけてそれを別の生地で包んでいるので、リヤドの極めて乾燥した状態でも中身のしっとり感が損なわれていませんでした。

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ムハンシャ (M'hansha/M'hanncha)
モロッコ方言でヘビの意味 (アラビア語では他にもサアバーン、ハイヤ、アフアー、ハナシュ)。形を見れば一目瞭然ですね。お店で食べた時は中身はココナッツかなと思いましたが、家に戻ってネットで調べてみたら、アーモンドの粉を砂糖や香辛料と一緒に練ったものだそうです。細長いヒモ状で外はパイ生地。蚊取り線香のように巻いて油で揚げた後、ハチミツにひたしてアーモンドをふりかければ出来上がり。これにもやはり花の香りが効いていました。

食感はネットリして重たいしかなり甘いのですが、アーモンドとハチミツと花の香りにつられて一気に半分まで食べてしまいました。結局そこでギブアップしましたが。

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ミントティー
アラブ料理屋ではよくミントティーを飲みますが、紅茶にミントの葉っぱが2、3枚入っているのが普通です。ところがこの店で飲んだものは緑茶がベースで、お茶の色も黄味がかっていました。ミントが主張しすぎず、とても穏やかな味。料理もそうですが、このひかえめな感じがいいですね。お茶を入れる時はできるだけ高い位置からカップに注ぐのがモロッコ流だそうです。この店の場合、カップを左手で持ち、右手のティーポットからお茶を注ぎ始めたら徐々にカップを下げつつポットの方は高く上げていき、最後は1メートルくらいの落差ができるくらいにして注いでくれました。泡だったところがおいしかったです。

補足フラワーウォーター
後日、気になってスーパーに行きまずローズウォーターを手に取ってクンクンしてみると、あの時嗅いだシェバキヤの匂いとはちょっと違う感じ (フタ越しなのでよくわからない)。隣にあったオレンジブロッサムウォーターと、せっかくなので初めて見た Kewra ウォーターと合わせて3本買ってきてあらためて匂いをくらべてみたところ、やはりシャバキヤの香りはオレンジだったろうという結論になりました。

一番安いの (どれも1本130円/レバノン製) を買ってきたせいかあまり上等な匂いはしませんが、寝る前に枕元にまいたりしました。ローズウォーターはアラブではおなじみ。日本でも薔薇ガムなんてのがありましたが、あの匂いです。オレンジブロッサムウォーターはその名の通りオレンジの実ではなく花の方の香り。Kewra (Pandanus) ウォーターは何日か前に食べたインド料理屋のデザートもこんな匂いでした。お香に少しフルーティーな酸味を加えた感じで、バンコクのお寺を思い出しました。

シリア料理(セット・アッシャーム)

リヤドのタラーティーン通りにあるアラブ料理店 「セット・アッシャーム」 に行ってきました。セットはレディー、シャームは北アラブ諸国であるシリア地域の旧称。ということで、店名を訳せば 「シリアの貴婦人」 あるいは 「北国の女」。なんだか演歌みたいなので、やはり前者の方がいいですね。

店内の装飾品や家具はすべてシリアから輸入したものだそうです。店員もほとんどシリア人でした。ただしサービスのてこ入れかフィリピン人が要所要所に配置されています。やはり実際にサービスを受けてみると、アジア人のきめ細かさには感心させられます。

週末 (水木金) の夜はビュッフェで、この日もシリア料理がずらりと並んでいました。といってもいわゆるアラブ料理なので、特に目新しいものはありません。ただすべてがちょっとずつ平均点を上回っている感じで、素直に美味しかったです。残念ながら値段が180リヤル (4700円) とシェラトンホテルのレバニーズビュッフェより高いのですが、食材の内容は完全に負けているし、ここでしか食べられない目玉料理もありません。結局、値段の半分くらいはお店の雰囲気とサービス料なのかなと思いました。

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実際この日は自分1人なのに、4人用の個室に通されました。部屋の中がアラブの雰囲気満点なのはいいのですが、さすがに1人だと若干の空しさが。もっとも、店員が入れ替わり立ち替わり声をかけてくれてそれほど寂しさは感じませんでした。その代わりみんなどんどん料理を持ってきてくれるので (自分でも取ってきているのに)、本当にお腹がはち切れそうなほど食べてしまいまた。

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ぜひ他の部屋も見てと言われて、6人用と8人用の個室や大人数用のVIPルームも見てきました。料理はそこそこおいしいし、こんなムードたっぷりの部屋で食事できるなら4700円も高くないかな? (自分は一食の値段としては今までで最高額でした)。

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廊下がまたいいんです。部屋の扉から電灯まですべてシリア製で。入り口で出迎えてくれたシリア人スタッフのソフトな対応も二重丸でした。

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トルコ料理(アッサラヤ)

リヤドにはたくさんトルコ料理屋がありますが、安くて美味しいの代表ならタラーティーン通りにある「アッサラヤ (Assaraya)」でしょう。まず、焼きたて熱々のパンが、香ばしくてモチモチしていて、とにかく美味しい。大人数で行くと超ロングなパンを焼いてくれるのもすごい。パンにホンモス (豆とゴマのペースト) をつけて食べるだけで限りなく満足してしまいます。

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ラムチョップ (+ミックスグリル) も、お店秘伝のタレに漬け込んでいると見ました。複雑玄妙な味わいに、オスマントルコの歴史と伝統を感じずにはおれません。チキンと野菜を鉢に入れてオーブンで焼いた料理も、アラビア半島のベドウィンには思いもつかない一品。ああ、思い出したらまたお腹が減ってきた。

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エジプト料理 コシャリ(フィシャーウィー)

エジプト時代に否応なく食べていたコシャリ。いい思い出はありません。なのでサウジアラビアに再赴任して、別に探し求めていたわけではないのですが、エジプシャンレストラン「フィシャーウィー (Fishawi)」が自然と目に入ってしまい、ついついふらっと入店。実はエジプト以外の国で食べるエジプトの食べ物って美味しいことが多いので、その検証も兼ねて。

結論から言うと、所詮コシャリはコシャリだなと思ったものの、いや意外と美味しいのかもこれ、なんてことを思わずにはいられませんでした。ちゃんと作ればやっぱり美味しいんですね、なんでも。ハトのマハシ (ご飯詰め) も美味しかった (写真はご飯が見えるようひっくり返しています)。ちょっとボリューム多すぎましたが。

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フィッシュ&チップス

サウジアラビアのイギリス人コミュニティーがウェブサイトを立ち上げてリヤドの生活情報を公開しているのですが、レストランのページにはやはりと言うべきかイギリス料理のレストランはひとつも載っていません。その代わり、「フィッシュ&チップス」 のお店が2軒あったので、その名もずばり 「フィッシュ&チップス」 というまったくひねりのない名前のレストランの方に行ってみました。

お店で頼んだのはコッドフィッシュ (タラ) のフライ (30リヤル=720円)。もともとフィッシュ&チップスは大好きなので、最初こそテーブルに運ばれてきたフライの巨大さに唖然としたものの、マヨネーズやピリ辛のタルタルソース、後半は赤いビネガーをふりかけて、あっという間に平らげてしまいました。山盛りのチップスは食べ切れませんでしたけど。

率直に言えば、とてもおいしかったです。揚げ方もバッチリ。衣サクサク、身はプリプリ。クセがなく甘味のあるタラの身は、口の中でとろけるおいしさでした。これが揚げすぎていたり古い油を使っていたりすると途端に世界最悪の食べ物になりますが、これはもう100点満点。あとはせめて少しでも野菜がついていれば完璧な一皿なのに。

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魚の暗号
初期キリスト教では、迫害を恐れた信徒たちによって、魚が信仰あるいはキリストを表すシンボルマークとして暗号的に使われていました。Wikipediaの 「イクトゥス」 にも歴史的な経緯が記されています。

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このことを知ったのは、ヨルダンにいた時です。どこかで見た車のバンパーに、2本線で表した魚のようなマークが書いてあって、気になって調べたらキリスト教のシンボルだということがわかりました。現代でも欧米では普通に使われているとのこと。

そしてこの「フィッシュ&チップス」というお店の看板、しっかりその形なんですね。イスラム教以外をまつることは一切許されない国、サウジアラビア。教会を建てるなど以ての外。多人数で集まってミサをすることも、十字架を外部に向かってディスプレーすることも厳禁です。そんな土地でこのマークを見つけてしまい、一瞬ギョッとしてしまいました。

お店のオーナーの意図はわかりませんが、サウジ当局は気づいていないようですね。魚が商品なんですから、デザインとしてはごく普通のものだし。しかしあらためてこの暗号が知られた場合、いったいどうなるのでしょう。

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幻のチーズ モンドール

中東では歴史的にヨーグルトやチーズなど乳製品が食べられてきました。アラブ人の生活にチーズは欠かせない一品で、ここサウジアラビアのスーパーマーケットでも、ヨーロッパから輸入された様々なチーズが所狭しと陳列されていて目を楽しませてくれます。日本よりは値段もだいぶ安いので、今までいろいろなチーズを食べてきました。その中でも特に好きなのが、カマンベール、エメンタール、ゴルゴンゾーラ。同じ牛乳を原料として、よくもまぁこれだけタイプの違う、しかもおいしいチーズができるものです。そのまま食べて良し、熱を加えても良し、料理に使っても良しと、まさに万能選手。我が家の冷蔵庫には常にチーズが入っていました。

しかし、あぁ、しかし・・・。ウォッシュタイプのチーズだけは、何度かトライしたのですがその度に挫折していました。ある年、グルメの知人がフランス旅行に行くというので、「おいしいチーズ」をお土産にリクエストしました。買ってきてくれたのは「ポン・レヴェック(Pont-l'Eveque)」。「ウォッシュタイプだけど食べやすい方だから」と言われてポンと渡されたのですが、受け取った瞬間、うっすらと漂うその臭いに「うっ…」と息が詰まってしまいました。おそるおそる包みを開けると、タクアンというかフランス人の足の裏 (←嗅いだことないけど) というか、そっち系の強烈な臭いが鼻をつきます。フォークの先に取って、目をつぶり口に運んでみると、鼻をつく臭気がプーンと広がり、とても飲み込むことは出来ませんでした。

その2年後、フランスに旅行する機会があり、「今度こそは」という覚悟を持って、再びウォッシュタイプのチーズを買ってみました。選んだチーズは「ラミ・デュ・シャンベルタン (l'Ami du Chambertin)」。ナポレオンが好んだとされるブルゴーニュ地方のワイン「シャンベルタン」の「友」という名を持つチーズです。しかし、やはりこれもその臭いにまず負けて、そしてひと口食べて「・・・・・・」。結局、その後もずっとウォッシュタイプだけは避け続けることになりました。

あの時の玉砕から何年もたちましたが、最近、食べるチーズが固定されてきたなぁ、冒険してないなぁと思っていたので、何か食べやすそうなウォッシュタイプのチーズはないかと再びインターネットを検索してみました。そうして、「幻のチーズ」「常温でトロトロのチーズ」「モミの木で巻かれたチーズ」と一部で熱狂的な評判を得ている「モンドール(Mont d'Or)」を見つけました。日本では流通量が少なく入手しづらいようですが、リヤドのスーパーに行ったら1軒目で発見、すぐに購入しました(400g/1800円)。

家に戻ってあらためて見てみると、インターネットに書かれていたような「木の箱から取り出せないほどトロトロ」ということはまったくなく、しかも表面の皮がコンコンと音がするくらい固かったので、やや不安になりました。ウォッシュタイプだけれど表面に白カビが生えているというのはその通りですが、ウォッシュタイプ独特のツーンとくる臭いがほとんどありません。食べやすそうだなとは思いつつも、どこかであの強烈な臭いを求めていた自分もいて、ちょっと残念な感じがしました。ただ、初めて口にする自分にとってはクセ弱めが丁度いいと思うようにしました。

ナイフで表面の皮を切って穴を開けてみると、中はトロトロというよりベトベト。しかしそのベトベトさは確かにこれまで見たことのない感じです。スプーンですくい取って口に運んでみると、熟成の進んだカマンベールのような風味で、コクがあってクリーミー、しかしひと癖あってもっと複雑な奥行き感のある味は、他では味わったことのないものでした。チーズの良いところを全部詰め込んだような堂々たる味わいには、「これこそチーズの中のチーズ」と思わせる力が。

それほど塩味もきつくなかったので、けっこうペロリといけてしまいそうだったのですが、賞味期限ぎりぎりまで熟成を進めて味の変化を見てみようと思ったので、後ろ髪を引かれつつ封をして冷蔵庫にしまいました。ちなみに、切り取った皮はオリーブオイルをふりかけレンジで30秒チン。カリカリになったのをおいしくいただきました。いやぁ、チーズって奥が深いですねぇ。

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