A Dog's World 

~海外で暮らす・日々の記録・旅の記憶~   

サウジアラビアのグルメ:サウジ料理

カブサ

アラビア半島の人はお米をよく食べますが、代表的なお米料理がカブサ (Kabsa) です。ヒツジを煮込んでスープをとり、そのスープでご飯を炊きます。大きなお盆にご飯を山盛りにしたら、煮込んでとろとろになったヒツジ肉をのせてできあがり。

日常的によく食べられている料理ですが、結婚式などお祝いの席となれば、あたりまえのようにヒツジが丸ごとのっています。丸ごとというからにはもちろん頭もついています。ヒツジの目玉と脳みそはもっともおいしい部分とされ、その日のゲストが食することになっています。

カブサはスプーンを使って食べても良いのですが、豪快に右手ですくって食べるのも良いでしょう。それは失礼にあたらないばかりか、むしろ喜ばれることの方が多いはずです。カブサを食べる時はたいがい大きなお盆のまわりに車座になって座ることが多いのですが、その時、あぐらではなく片膝を立てて座るとより多くの人数で盆を囲むことができます。

ちなみに、煮込んだ肉のかわりに、蒸し焼きにした肉をご飯の上に乗せたものをマンディーといいます。個人的には肉のうまみを存分に味わうことができるマンディーの方が好きですが、カブサのとろけるような肉も、やはり捨てがたいです。ああ、書いている側からヒツジが食べたくなってきた!

サウジアラビアでよく食べられている肉は一番がヒツジ、次いで鶏肉です。牛肉は値段も安いのですが味もそれなりで、あまり人気はありません。ヒツジ肉と聞くと、独特の臭みを思い浮かべる人が多いと思いますが、日本で売られているものと違って、中東のヒツジは本当に美味しいと思います。

ひと口にヒツジと言ってもその種類はたくさんあって、羊毛をとるもの、ミルクをとるもの、そして食用のものと、用途によって様々な種類が生み出され、また1頭の値段もピンキリです。サウジアラビアでは年に1回、ヒツジの国際マーケットがあって、そこで競り落とされる最高級のヒツジには、なんと数百万円の値がつくのだそうです。

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砂漠のトリュフ

例年に比べてかなり雨がたくさん降った1996年1月、リヤド。ある日の新聞に「砂漠のトリュフ」という記事が載りました。それは大変貴重なキノコで、特殊な草が生える一部の砂漠地域にごくわずかできるものとのことでした。それがこの雨で、何年ぶりかの豊作が期待されているそうです。

珍しい食べ物があるものだと、その時はさほど気にせずにいたのですが、何週間かして町の中心部にあるバトハスークに出かけてみると、いつにない人だかりです。袋や箱があちこち並べられ、売り手と買い手が熱心に商談しています。のぞいてみると、ジャガイモのような茶色いものがごろごろと山積みになっていました。

「砂漠のトリュフだ!」そうピンときて、卵くらいの大きさの物をいくつか買って帰りました。家に帰ってまじまじ眺めてみると、確かに土の中で育ったキノコの仲間なんだろうとは思いましたが、はたしてトリュフなのかと言われれば、どうも自信がありません。というか、これまでトリュフをトリュフだと感じるくらいの大きさで食べたことがありません。

半分に切ってみると、においはかなり濃厚なマッシュルームといった感じです。そういえばトリュフのにおいって知らなかった、などと今更気がついてしまいましたが、とりあえず、いくつか調理してみることにしました。

最初は丸のままいく勇気がなかったので、細かく刻んでバターといため、ステーキ用のソースを作りました。できあがったものは、まぁおいしいことはおいしいのですが、においも薄くなって、どうもパンチがありません。

そこで、アルミホイルに包んで丸焼きにしてみましたが、これはなかなかのものでした。においは十分残っているし、シイタケなど一般的なキノコとは違い、なんともほこほことした食感でした。

やっぱりイモの仲間かな、と思って翌日職場にそれを持っていくと、年輩のスタッフから「あぁ、それはファガア (イモ) だな、うまいだろ」と言われました。ファガアがイモなのかキノコなのかはわかりませんが、いずれにしてもそれが欧米人の間では砂漠のトリュフと呼ばれ、ものすごく有名な、しかしなかなか手に入らない幻の食べ物として渇望されているのだそうです。

この年はファガアの当たり年で、3月になるとソフトボール大のものまで出回るようになりました。さすがにそこまで大きいものになると、キロあたり1万円もしていました。

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ベドウィン料理

サウジアラビアの首都リヤドは、砂漠に囲まれたオアシス都市です。ひと口にアラブといってもいろいろな食文化がありますが、リヤドのそれはベドウィン料理そのものです。リヤドには、シャアビーヤレストランという、純サウジアラビア料理を売りにしているお店がありました。

レストランの内装は、日干しレンガで装飾された外観とともに、古き良き時代のサウジアラビアの伝統家屋を模しています。時に砂漠の旅人を、死に至らしめる激烈な太陽光は分厚い土壁に遮られ、店内は薄暗闇に包まれていました。

地面にしかれたカーペットに腰を下ろし、香炉から立ち上る香りを感じながら、装飾が施された肘掛けに寄りかかれば、気分はもうアミール (王子) とアミーラ (お姫様) です。

メニューを開くと、一般的なアラブ料理に加えて、サウジアラビアの伝統料理というページがありました。サウジアラビアといっても、リヤドがあるアラビア半島中心部、ネジド地方の伝統料理です。

まずはヒツジの足のスープ。スープの中にヒツジの足先が入っていますが、豚足と同じようにけっこうゼラチンがあります。スープの味付けは、コンソメスープに漢方胃腸薬を入れたような味。見た目はちょっとアレですが、かなり美味しくいただきました。

メインディッシュは、ゆでた小麦粉の団子を肉のエキスで味付けしたような、ちょっと変わった料理でした。味も悪くはなかったのですが、いかんせん見た目が貧相と言うか、だいぶグチャッとした見てくれの料理でした。

ここは何より建物の雰囲気を楽しむお店です。100年前にタイムスリップしたようなあの独特な空間は、何物にも代えがたい貴重な体験になるでしょう。

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豆は美味しい

サウジ人の友達に誘われ、豆料理専門店に行ってきました。カラハ (Kalaha) レストランという名前は、サウジ人にとってもあまり聞き慣れない名前だそうで、オーナーはヨルダン系とのことでした。

同じ料理であっても、ヨルダン、シリア、レバノンは他の地域に比べてひと味違います。食は北アラブにあり、というのがアラビア半島人に共通した考えです。今回もヨルダン系レストランと聞いて、俄然期待が高まりました。

店のメインディッシュは、フール、ホンモス、ファラーフェルという、アラブの食生活には欠かせない豆料理三品です。フールはソラ豆をオリーブオイルやスパイスと煮込みどろどろに煮崩したもの (温かい料理)。

ホンモス (ホンモス・ビッタヒーナ) は茹でたヒヨコ豆をオリーブオイルとゴマペーストやニンニクなどのスパイスと混ぜてペースト状にしたもの (冷たい料理)。

ファラーフェルは、エジプトではタアメーヤとも言いますが、ソラ豆などから作ったいわばコロッケで、揚げたては殊の外美味しく感じるところも、コロッケに似ています (冷めたらちょっと…)。

専門店というだけあって、この三品にはそれぞれ何種類もバリエーションがありました。フールならエジプト風、シリア風、ゴマ風味、エルサレム風。ホンモスはベイルート風、肉入り、松の実入り。

そしてファラーフェルは、スパイシーな炒めタマネギを具として詰めたものなどです (ファラーフェル・マハシーヤ)。これは自分も初めて食べたし、サウジ人の友達も他の店では見たことがないと言っていました。この日食べたものの中では一番おいしかったです。

この日は、フールとホンモスを数種類ずつ頼み、他にもシャクシューカ (トマト入りスクランブルエッグ)、肉入りバンドゥーラ (焼きトマト) など、食べきれないほどの料理を堪能しました。

ヨルダンに2年住んでいた身としては、やはり本場にはかなわないかも、と思ったりもしましたが、写真のように見た目はシンプルなのに、やはりリヤドの他の店で食べるものとは味が違うなぁと、ヨルダンの実力をあらためて感じたのでした。

ちなみに、料理が来るといい匂いに我慢ができずすぐに手を伸ばしていたので、「あ、写真撮らなきゃ」と気がついたときにはちょっと食べ散らかした感じになっていて見た目が悪いです。悪しからず。

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ブハーリーライス

サウジアラビアの生活で、週に3度は利用しているのが「ブハーリーレストラン」です。市内至る所にありますが、すべてが同じチェーン店というわけではなく、共通しているのは「ブハーリーライス (Ruzz Bukhary)」という炊き込みご飯を出すことです。

その由来は、ウズベキスタンのブハラ州にあると言われています。この地域は8世紀初頭にはすでにイスラム帝国領となっており、古くから多くの巡礼者がマッカを訪れていました。そんな彼らが残していったのが、ブハーリーライスのレシピです。

長粒米をチキンスープと香辛料で炊きあげたもので、それだけでは薄味ですが、噛めば噛むほどじわっとおいしさが口の中に広がります。普通はローストチキンやシチューなどをおかずとして頼みます。

写真はライス1人前とハーフチキン。野菜はおまけでついてきます。1人前にしてはご飯の盛りが良すぎるので (丼3杯くらい)、「ライス半分、値段も半分」というオーダーができれば良いのにといつも思います。でも、これで値段は10リヤル (300円) ですから、ご飯のみだとたぶん2~3リヤルでしょうか。半分にしてもたいしてトータルの値段は変わりませんね。

それにしても、ご飯を炊く釜が大きいこと。どの店も直系1メートルほどの釜が3~4個あります。「ご飯くらいは好きなだけ食べてくれ」という気持ちの表れなんでしょう。ありがたいけど、また太ってしまう…。

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サウジアラビア料理

リヤドに再赴任してから半年間、職場で「サウジアラビア料理ってどこに行けば食べられる?」とことあるごとに聞いていたのですが、一度も的確な答えをもらったことはありませんでした。逆に、「そういえばサウジアラビア料理と言い切れる食べ物ってなんだろう」と悩んでしまう人も多かったです。

もちろん、これまでもたびたびお世話になってきた「ブハーリーライス」や、結婚式には欠かせない「カフサ」と「マンディー」がそうだと言えるかもしれません。ただ、これらの米料理はカタールにもあったし、サウジアラビア料理と言うより「アラビア半島料理」といった方が適切でしょう。

また、今では当たり前のように米料理を食べているサウジ人ですが、もともと稲作文化があったわけでもないこの国にここまで米食が広まったのは、原油収入が飛躍的に増え、アジアから出稼ぎ労働者が百万人単位で入ってきた1970年代以降のことではないかと思います。

その時から町にはアジア人労働者のためのレストランが無数にでき、またサウジ人の家庭に入ったメイドやコックが頻繁に米料理を作ったことは想像に難くありません。

なので、そういう環境で育った今の若い世代にとっては、例えば100年以上前から食べられているもサウジアラビア特有の郷土料理と言えるものがあるのかどうか、そしてそれはどこに行けば食べられるのかなどということは、あまり関心がないのかもしれません。

それはさておき、最近知ったレストランの紹介を。店の名前は「Al-Mazrah」。「マズラア (農場)」というだけあって中はとても広々した敷地で、コテージ風の小部屋やマジュリス風のテントルームがたくさん並んでいます。

客は絨毯の上に車座になって食事をいただくスタイルで、なんとも雰囲気がよろしい。敷地の一角には馬がつながれていて、おそらくリクエストすれば乗れるんじゃないかと思います。食事中、風向きによってはプーンと馬の匂いが漂ってきましたが。

メニューにおなじみのアラブ料理が並ぶ中、「シャアビーヤ (国民の)」という項目に3品がありました。それが「グルサーン (Qursan)」、「ジャリーシュ (Jarish)」、「マスルーサ (Mathlutha)」です。

「グルス」は丸くて平べったい薄焼きパンのことなので、グルサーンはたぶんそのパンをちぎってトマトソースで煮込んだ料理。ジャリーシュは「つぶした麦、米」というその意味の通り、麦のおじやといった料理。マスルーサはこの2品の上にご飯をドサッと盛りつけたものです。

グルサーンは2枚目の写真の茶色い方。焼いたパンの香ばしさとチキン、トマト、野菜の旨味がマッチしていて、あっという間に食べてしまいました。そして白い方がジャリーシュ。何も入っていないシンプルなおじやですが、口に入れるとほんのりミルクとバターの風味が広がり、見た目以上に満足感のある一品。絶妙な塩気で味付けされていました。美味しかったけれど、何かおかずもほしかったなぁ。今回は"純"サウジアラビア料理という趣旨だったので、これ以外頼みませんでした。

ちなみにもうひとつ2枚目の写真に写っているオレンジ色のは「クナーファ」というデザート。ヨルダンで食べたクナーファはココナッツの下がモッツァレラみたいなフレッシュチーズで、本当はそれが正解のようですが、マズラアレストランのものは固めのライスプディングのようでした。まあこれはこれで。

ということで、久しぶりにグルサーンを食べましたが、昔シャアビーヤレストランで食べたものよりずっとおいしいと思いました。見た目もちょっと違っていたし。コックがサウジ人ということはないでしょうし、ヨルダン人とかレバノン人のコックが料理しているのだとしたら、何かが変わってしまうのも仕方ないことですね (味は良くなっていると思いますけど)。

伝統的な"純"サウジアラビア料理の味が、どこかで引き継がれていることを願わずにはいられません。というのも、「奥さんから娘に家庭の味って教えるの?」とサウジ人に聞くと、だいたいいつも「うーん、たぶん…」という微妙な答えしか返ってこないので。

確かに、ほとんどの家庭にメイドさんがいて料理はお任せできますから、奥さんが自分で料理する必要はあまりないのかも。というか、職場スタッフのお母さん世代ですら、すでに子供時代にはメイドさんがいたでしょうから、そもそもが怪しいかも。

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マンディー

カブサと同じくサウジアラビアの代表的なお米料理であるマンディー。以前、砂漠のテントで友人に作ってもらったマンディー (鶏) は次のようなものです。密閉した釜の中で炭火で蒸し焼きにした肉をご飯にのせて出すのが正しいマンディーのようですが、地面に穴を掘って釜にすることや肉汁でご飯を炊くことが絶対条件なのかどうかはわかりません。

①半分に切ったドラム缶を地面にうめる (常設)。
②ドラム缶の底で火をおこし、炭火にする。
③大きな盆に洗った米をしきつめ、中に置く。
④丸鶏にスパイスと塩コショウをまぶす。
⑤お米の上に丸鶏をつるす (写真参照)。
⑥ドラム缶にフタをして、土をかけうめる。
⑦3~4時間したらフタを開け中から取り出す。

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鶏から脂と水分がポタポタ落ちるので、お米を炊くための水はほんのわずかでいいそうです。この時もそうだと言っていましたが、芯も残らずおいしく炊きあがりました。下手な人はつい水をたくさん入れすぎて、ご飯がベチャベチャになってしまうのだとか。

この時は鶏でしたが、パーティーで出されるのはやはりヒツジが多いです。焼き上がった肉はいぶされていてとても香ばしく、カブサの茹で肉よりずっとジューシーな仕上がりになります (もちろんうまく調理すればですが)。カブサはジューシーというよりトロトロの食感。

この時も友人は4時間近くかけてじっくりと調理してくれたのですが (実際には彼が雇っているインド人)、本式にやろうとしたら個人ではなかなか大変です。ベドウィン伝統の由緒正しい料理ではありますが、現代の家庭料理とは言い難いかもしれません。

しかしこのスモーキーな味わいはサウジ人の味覚をしっかりととらえており、あいかわらずパーティーではカブサとともに威風堂々、メインディッシュの地位を保っています。

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そんなわけで、家の近所にあって前々から気になっていたマンディー屋に行って、マンディーをテイクアウトしてきました。レジで 「アボガー・マンディー・サファリー (マンディーください、テイクアウトで)」 と伝えると、まずラハム (ミート=ヒツジ) かダジャージュ (チキン) か聞かれ、続いて「カム? (いくつ?)」 と聞かれました。「ワーヘド (ひとつ)」 と伝えると、すかさず 「アルバイーン (40リヤル=1040円)」 と言われたので、びっくりして思わず聞き返してしまいました。

普段食べているブハーリーライスはハーフチキンをつけても11リヤル (290円) です。マンディーは格式の高さが違いますから多少は高いとは思っていましたが、予想よりずっと高かったです。家に帰ってきて包みを開けてみると、肉はそれほどたくさんとは言えませんが、まぁ、一人分としては十分な量です。驚いたのはご飯の量。どう考えても食べきれる量ではありません。客人が食べきれないほどのご飯を出すという、ベドウィンの伝統にのっとっているのでしょうか。

ご飯は肉のスープで炊いたものでしょう。噛めば噛むほど旨味が口に広がります。肉の方はスモークの香りが効いていて、きちんと作られているなという印象。適度な塩味がついたジューシーな肉は、柔らかくて最高の仕上がりでした。お米もバスマティライスの香り立つ一級品。肉は生後ほんの数ヶ月の子ヒツジ (肋骨がか細かった) で臭みがなく、脂がさっぱりしていて甘い。レバーとモツも入っていたし、40リヤルの価値は十分にあったと思います。ブハーリーとは見た目があまり変わりませんけど、やっぱりおいしいな、マンディー。しかしご飯はかなり残してしまいました。

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ラクダ

日本に帰ったらまず食べられないだろうと思うのが、ラクダ肉。今のうちにと、「マトアム・マッキー・マスルーサ」 でラクダのカブサを買って食べました。

味はくせもなくまぁ普通ですが、ヒツジよりはちょっとかたいかなという感じ。ラクダは別の煮込み料理にした方がおいしいかもしれません。でもカブサという、サウジ料理として食べるのがいいわけで、これはこれでおいしくいただきました。

このお店ではまた別の日に、店の名前にもなっているマスルーサをテイクアウト。ご飯の下にはジャリーシュとグルサーンが埋まっていて、上にのっているのはヒツジ肉。ラクダよりやっぱりヒツジの方がおいしいかな。

ラクダ肉はリヤドのスーパーで普通に売っています。時々買って料理していました。写真はラクダのひき肉。ハンバーグにしました。ラクダは焼いて水分が抜けるとかたくなってしまうのが玉に瑕。

ラクダのミルクも時々購入。牛乳より少し水っぽいかな。

黄昏のシャワルマ

リヤドにシャワルマ屋は数あれど、当時はヤマール・アッシャーム (Ya Mal Assham) がもっともおいしい店だろうと思っていました。サウジ人に 「そうだよね?」 と聞くと、みんな大体 「そうそう!」 と言ってくれたし。そして再びのリヤド生活。地域の開発とともに当時通っていたお気に入りのレストランはその多くがなくなっていて、ヤマール・アッシャームもそんなもののひとつでした。

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この1年、シャワルマはもっぱら家の近所で買っていますが、特に疑問も持たず、十分おいしいと思って食べています。ただ、時々ヤマール・アッシャームのシャワルマを思い出すこともありました。今食べているものとどう味が違うかはうまく言えませんが、とにかく昔食べていたシャワルマはもっともっと美味しかったような気がします。

ある日、サウジ人の旧友と会った時、10年たってリヤドもずいぶん変わったという話題になりました。その中で彼は、「町も人も変わったけれど、シャワルマのように町で食べる食べ物の味が変わった、昔の方が美味しかった」としみじみ言っていました。なんとなく自分もそんな風に考えていていたので、「やっぱりそうだよねぇ」と深くうなずいてしまいました。

その後もずっとシャワルマは家の近所で買っていたのですが、先週、オレイヤ通りを走っていた時、アカリヤ交差点のすぐ先に巨大なヤマール・アッシャームの看板を見つけてハッとしました。何度か通っている道なので今まで気がつかなかったのが不思議なくらいですが、当時の小さな店とくらべたらとんでもなく大きく、そしてお洒落な外観だったので、意識に入ってこなかったようです。

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数日後、そこが当時の店 (の発展型) なのかはわかりませんでしたが、とりあえず行ってみることにしました。近くの路上に車を止めて店に入ると、外観も大きいですが店内もかなり広めで20m×20mくらいありました。シャワルマ屋というよりはアラビックのファストフードを手広く扱うお店で、テイクアウトもそうですが店内のテーブルで食べている人もたくさんいます。若者が多いし学食のような雰囲気でした。

レジでメニューを見るとサンドイッチ系のものだけでもかなりの数で、レバー、タン (舌)、ブレイン (脳) など個人的にそそるものがたくさんあります。いろいろ迷ってシャワルマのチキンとミート (ラム)、それにレバーサンドイッチを頼みました。どれもひとつ4リヤル (104円)。残念ながらタンとブレインはありませんでした。もっと人が混みそうな夜の時間帯にくればあるのかな。

久しぶりのヤマール・アッシャームのシャワルマは、値段が1リヤルアップしてるわりにサイズダウンしていることと、前は筒状にきちっと丸められていたものが三角っぽくふわっと巻かれていることに多少の違和感を感じましたが (やっぱり違う店?)、なかなか美味しくいただきました。

微妙に残念感はありつつも、家の近所のシャワルマ屋よりはやっぱり美味しいかなと思ったりしたわけですが、当時の強烈なイメージ、味もそうですがどでかいチキンシャワルマが堂々と3つも並んでいた店内の、シャワルマにかける意気込みがひしひしと伝わってきたあの頃の熱気のようなものがほとんど感じられず、一抹の寂しさを感じたことも事実です。

古き良き時代は過ぎ去ってしまったのかと思う反面、変わったのは自分の方かな、などと妙に黄昏れてしまいました。

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シャワルマ食べくらべ

レシピがシンプルで、だいたいどの店で食べてもそれなりにおいしいシャワルマですが、今まで違う店のものを同時に食べくらべたことはなかったので、いい機会と思ってチャレンジしてみました。

チキンシャワルマ
写真向かって左から、①シャワルマ・キングダム (家の近所の店)、②アッサラヤ (よく行くトルコ料理屋)、③ヤマール・アッシャーム (昔通っていた店)。どれも基本は鶏肉、フライドポテト、ピクルスをマヨネーズと一緒にホブズ (パン) で巻くスタイル。

①シャワルマ・キングダム (3リヤル=78円)
肉のカットが小さめ。肉の味付けは塩コショウ。肉だけつまんで食べるとやや物足りない。全体を食べた時、マヨネーズが多めなのでボソボソ感はない。シンプルだが全体のバランスが良い。マヨネーズの代わりにケチャップも指定できるが、ケチャップだとかなりイマイチ。

②アッサラヤ (3リヤル=78円)
この店のシャワルマは初めて食べました。肉のカットが大きめかつ多め。肉の味付けは塩コショウ。肉だけつまんで食べてもボリューム感があり肉本来の旨味が味わえる。マヨネーズは少なめで全体を食べると肉の存在感がはっきりしている。作りたての熱いうちに食べればボソボソ感はない。

③ヤマール・アッシャーム (4リヤル=104円)
肉のカットは中くらい。アッサラヤより焦げ肉が少なくジューシー (どんどん売れていくのでじっくり焦げるほど焼く時間がないのかも)。肉だけつまんで食べるとシコシコしていてとてもおいしい。肉の味付けは塩コショウ+スパイス (コリアンダーとかその辺りの感じ)。このスパイスの香りが「本物」を思わせる。ガーリックマヨネーズが効いていて、全体を食べると濃厚で奥深い味。

ミートシャワルマ (ラム)
写真向かって左から、①アッサラヤ、②ヤマール・アッシャーム。レシピは店によってまちまちな感じ。

①アッサラヤ (3リヤル=78円)
肉のカットが大きめ。肉の味付けは塩コショウ。フライドポテト、ピクルス、マヨネーズが入る。肉本来の旨味が味わえるとも言えるが、あまりにもストレートに肉なので、臭いも含めて自分には正直つらかった。マヨネーズも少なめで、全体を食べるとかなりボソボソした感じ。冷えてしまうとさらに厳しい。

②ヤマール・アッシャーム (4リヤル=104円)
肉のカットは小さめかつ多め。肉の味付けは塩コショウ。バクドゥーニス (イタリアンパセリ) とタヒーナ (ゴマペースト) がたっぷり。トマト一切れにピクルスも多めなので全体を食べるとジューシーさが際だつ。チキンシャワルマとは完全にレシピが違う。ラム肉専用に考え出されたレシピに好感が持てる。おいしい。

ということでチキン、ミートともに、やはりヤマール・アッシャームに一日の長があるという結果になりました。味については各人のお好みですね。昔の自分はチキンシャワルマ一本やりでしたが、今回ミートが思いの外おいしいということに気付きました。どの店もチキンの方が圧倒的に販売量は多いですが (キングダムもミートはやっていない)、また少しシャワルマ屋に通っておいしいミートシャワルマをさがしてみよう。

砂漠のトリュフ再び

世界三大珍味、あるいは台所のダイヤモンドともいわれるトリュフ。フランス産黒トリュフとイタリア産白トリュフが世界的に有名ですが、世界には同種のキノコが30種以上あるそうです。

中東地域では、古くは古代エジプトのファラオが食したとパピルスに記され、またアラビア遊牧民の間でも、砂漠で採れるこの貴重なキノコは昔から珍重されてきました。欧米人はこれを 「砂漠のトリュフ (Desert Truffle)」 と呼んでいますが、現地の名前はいろいろです。

-テルフェズ (モロッコ)
-テルファス (エジプト西部の遊牧民)
-ファッガ (クウェート)
-ファガア、ファグウ (サウジアラビア)
-ハラスィ (サウジ東部) ※ローカルの品種名 (黒)
-ズバイディ (サウジ東部) ※ローカルの品種名 (白)
-カマー (シリア)
-キマー、チマー (イラク)
-ファガ、ズバイディ (オマーン)

ファガアの香りは濃厚なマッシュルームあるいはナッツの風味といった感じで独特のねばっこい匂いですが、実際は香りを楽しむよりファガアそのものを食べることが目的となります。火を通して食べると栗のようなホコホコした食感と甘味が口に広がって、何より大粒なのでなかなか食べ応えがあります。

何種類か調理法を試しましたが、結局丸のままオーブンで焼くのが一番美味しいと思いました。卵くらいの大きさなら220℃で20分くらい。焼けたら半分にカットして、熱いうちにスプーンですくって食べます。お好みで醤油をたらしてもいいでしょう。焼くのを10分くらいにすればよりフレッシュな香りとサクサクした食感が楽しめ、30分焼くと一段と汁気が分離して旨味が増しますが、香りはだいぶ飛んでしまいます。

ちなみに皮はパリッとしたままなので、手で持って食べられます。皮には砂がたくさんついているので食べられません。アルミホイルを巻いて焼くと食感がグニュグニュした感じになるのでおいしさ半減と思いました (好みでしょうけど)。ベドウィンはそのまま火の中に放り込んだら数分で取り出し、ガブリと豪快に食べるそう。通ほどあまり火は通さないようです。

他に試したのは、ファガアを薄切りにして熱いお吸い物を注ぎしばらく蒸す方法。これもサクサクと食べられておいしかったですが、香りはあっという間になくなりました。もうひとつは厚めに切ってソテー。これもなかなかいいですが、どうせならもっと大きいものを買って、分厚くした方がおいしいと思いました。でも、大きくなると値段が跳ね上がるんですよね。シーズンはこれからなので、まだちょっと様子見です。

それにしても、道ばたで売っていたファガアを我ながら目ざとく見つけたものです。おかげで13年ぶりの珍味を堪能しました!

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ナジュドビレッジ

「ナジュドビレッジ (Najd Village)」 はアラビア半島内陸部、ナジュド地方伝統の建物を模したレストランです。サウジアラビアはドアの装飾が特徴的で、国立博物館にもドアコレクションが展示されているほど。メニューはナジュド料理がメインで、ここまでサウジアラビア料理がそろっているレストランはなかなかありません。

思っていた以上にメニューが多かったこととどれも見た目が似通っていたため、一通り料理の名前を聞いた後にみんなでお皿を回しあって配置がバラバラになったら、もうよく分からなくなってしまいました。しかも写真を撮ったと思っていたら実はまだ撮っていないものもあったりして、みんなで一緒になって 「あれ?、これ違う料理?」 などと言い合いながら食べたのでした。

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サウジ国産ハンバーガー

アメリカにマクドあり、そしてサウジにハルフィーあり。ハルフィーは創業27年、サウジアラビア純国産ハンバーガーチェーン店です。全国に120店舗を展開し、名実ともにサウジアラビアNo.1ファストフード店です。

以前リヤドにいた時もその看板はかなり目にしていたのですが、「何もわざわざハルフィーに」という失礼な気持ちを抱いていたため、一度も入り口の扉をくぐることはありませんでした。

そして今回、離任まであと数日とせまったこの時期に、「何でわざわざハルフィーに」と思わないでもありませんでしたが、これを逃せば一生その味にふれることはないと気を取り直し、家から一番近いお店に行くことにしました。以下、コメント。

【サービス】
なかなか注文が・・・。若者がばんばん横入りするし、レジのサウジ人の兄ちゃんはこちらを完全無視だし、この国においてアジア人労働者が置かれている立場が少し理解できました。他のファストフード店よりサウダイゼーション (労働力のサウジ人化) が進んでいるため、こんなことになっているのかも。ほめていいんだか悪いんだか。

【味】
ひどいサービスとは裏腹に、味についてはバーガーキングのワッパーに似ていて美味しかったです。トマトとマヨネーズがたっぷりで、玉ネギ、レタス、ピクルスも大きめ。パンもこだわりの自社生産で甘味があって美味しいし、とにかく全体のバランスが良い。ビッグマックよりは断然こちらの方が美味しいと思いました。

ポテトはなんだかコクがなくていまいちだなと思ったら、袋に「コレステロールフリー」の文字が。なかなかあなどれません。世界進出もいけるんじゃないんでしょうか。というかそうすれば店員もサウジ人ではなくなるから、絶対にその方がいいでしょう。

【ロゴ】
ハンバーガーのようなロゴは、アラビア語の 「H (ハー)」 です。ハルフィーのハ。外人の間ではハーフィー (Herfy) と言うのが一般的ですが、アラビア語の発音はハルフィー。

ちなみにスーパーハーフィーではなく、スーバルハルフィー。ボテトとビブシもついてるよ。P音がないってちょっと不便。

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ガホワ(アラビックコーヒー)

アラビア湾岸諸国では「アラビックコーヒー」がポピュラーです。コーヒーはコーヒーですが、煎った豆を荒くつぶしカルダモンと一緒に煮出したもので、色は緑がかった黄色、いわゆるコーヒーの香りはあまりしません。これをコーヒーと言われて出されると、たいていの人は「ん?」と思うようですが、アラビア語で「ガホワ (Qahwa)」」と言われ、ベドウィンスタイルのテントで乳香を炊きながら飲んだりすると、しみじみ「うまいなぁ~」と思います。

一度にあまりたくさん飲むものではなく、カップもおちょこのような大きさです。お客さんの前で、アラビア風の金のポットを高々と持ち上げ、できるだけ細く糸のように注ぐのがこちらのスタイルです。一緒に食べるのはもちろんデーツ (ナツメヤシの干した実)。ガホワの渋さとデーツの甘みが口の中で渾然一体となっていく感覚は最高です。まぁ、渋茶に干し柿といった感じでしょうか。

ちなみにこのガホワ、「もういらない」と言うときはカップを返すとき空にしたカップを左右にちょこちょこと振ります。これをしないと延々コーヒーをつがれることになりますのでご注意を。

写真はリヤドのダウンタウンにあるマスマク城の正面に店を構えるマクハー (喫茶店) のものです。

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デーツ

デーツ (Date Palm/ナツメヤシ) はアラビア遊牧民にとってなくてはならない植物です。デーツの木は20~30mまで成長し、8年目から実をつけはじめ、30年で成木になります。寿命は100年程度。1房に200~1000個の実をつけ、1本の木で年間200kg以上の実を産出するものもあります。

果肉の部分には、約58%の糖分とそれぞれ2%の脂肪、タンパク質、ミネラルが含まれます。大切な栄養素はほとんど含まれていると言われているように、昔のベドウィンはデーツとミルク (ヒツジorラクダ) さえあれば生きていけたそうです。栄養満点なので、産後の肥立ちにも良いのだとか。

また、デーツの葉と葉柄はかごや枝編み細工、バッグやマットの材料となります。繊維からはロープがつくられたり、コーヒーポットの注ぎ口に詰めてフィルターの代わりにもなります。アラビア遊牧民はデーツがあったからこそ、砂漠地域でずっと暮らしてこれたのです。

デーツの本場と言えばやはりサウジアラビアです。専門店には何種類ものデーツが並び、さらにデーツを使ったお菓子、ジュースなどもあります。ミカンやリンゴがそうであるように、デーツも様々な品種があります。

自分がリヤドにいた当時、キロあたりの値段が一番高いものは聖地メッカ (マッカ) 産のものでした。粒長は6~7cmとかなり大きめ。口に入れただけで歯がズキズキと痛くなるほどの激甘デーツは、大の甘党のサウジ人にはこの上ないものです。自然の果実でここまで糖度が高いものは他にないのではないでしょうか。干し柿など比べものになりません。

サウジを離れた後、サウジに赴任した知人からもらったデーツは、大きめのサクランボといった感じの丸型でした。初めて見るデーツでしたが、口に放り込むとまるで黒砂糖のように奥深く滋味のある甘みでした。自分にとっては今のところ生涯最高の「甘いお菓子」です。その後、再赴任してたくさん食べました!

なかなか観光では行けないサウジアラビアに比べ、アラブ首長国連邦のドバイは行こうと思えばいつでも行くことができます。ドバイのDeira City Centerでサウジのデーツ専門店「バティール (Bateel)」を見つけた時は喜び勇んで店内に入りましたが、残念ながらこのデーツはありませんでした。個人的にはかなり美味しいと思うのですが、そこまで糖度が高くないのでアラブ人にはいまひとつ人気がないのかな。あるいは貴重すぎて輸出されていないとか。

逆にサウジ人に一番人気だったのは、ズバリ砂糖という名前の付いた「スッカリー」。普通デーツは十分に熟し、水分がとんで焦げ茶色にならないと渋くてとても食べられませんが、スッカリーは実が黄色くなってくれば十分食べられるほど甘いものでした (ちょっと渋みはありましたが)。

また、おそらくどの品種でも良いというわけではないと思いますが、まだ実が黄色いうちに収穫して、冷凍保存しながら熟成させるやり方もあります。冷凍で長期間保存しトロトロに熟した甘い実 (黄緑色っぽい) を、アラビックコーヒーと一緒に食べるのは最高の組み合わせでした。

デーツはスーパーマーケットでもいろいろ種類が売られています。食べ比べできるのも、サウジアラビア在住者ならでは。

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ヨーグルト

サウジアラビア再赴任のひとつの大きな楽しみが、写真のヨーグルトでした。スーパーで普通に買えるものですが、素焼きの鉢に入れられたこのヨーグルトは、濃厚さ、キレのある酸味、豊かな風味と、三拍子揃ったパーフェクトなヨーグルトです。これにくらべたら日本で売っているヨーグルトは水みたいに薄く感じます (それはそれで好きですが)。さすがは遊牧民の国、乳製品の取り扱いは数千年の歴史がありますから、やはりレベルが高いです。

※サウジアラビアで食べたその他の料理は別記事にまとめました。
 →サウジアラビアのグルメ:アラブ料理
 →サウジアラビアの料理:洋食・和食・中華料理